夜明けの花園 [ 恩田陸 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
謎に包まれた学園の内部を描いた短編集。全寮制の学園であり、様々な事情を抱えた生徒たちが集まっている。理瀬シリーズと呼ばれるシリーズの最新作。長編作品としては「三月は深き紅の淵を」から始まり「麦の海に沈む果実」「黒と茶の幻想 上下」「黄昏の百合の骨」「薔薇の中の蛇」がある。そのほか短編集もあり、作者が昔から続けているシリーズだ。
学園内部は、大事に育てられる「ゆりかご」、立派に成長させるための「養成所」、決して学園から外に出すことが許されない「墓場」といわれている。独特な雰囲気が漂う世界観で、ヨハンや校長などが活躍する。幻想的な世界であり、有力者の子供たちが通う学園ならではの危険に満ちた生活が描かれている。
■ストーリー
湿原に浮かぶ檻、と密やかに呼ばれていた全寮制の学園。ここでは特殊な事情を抱える生徒が、しばしば行方を晦ます。ヨハンの隠れた素顔、校長の悲しき回想、幼き日の理瀬、黎二と麗子の秘密、月夜に馳せる聖、そして水野理瀬の現在。理瀬と理瀬を取り巻く人物たちによる、幻想的な世界へ誘う六編。
■感想
過去に読んだ作品もある。「水晶の夜、翡翠の朝」は学園内部に潜んでいる暗殺者を探す物語だ。笑いカワセミというキーワードばかりが印象に残っているのだが、暗殺者の間抜け具合も強く印象に残っている。
さっさとターゲットを暗殺すれば無事に任務を達成できるのだが…。独特な雰囲気をかもしだすミステリーだ。過去に読んだことがあるのを読んでいる途中で思い出した。ヨハンの恐ろしいまでの頭の切れとかっこよさは強く印象に残っている。
「墓場」ルートの生徒たちはひそかに生存競争をしている。油断すると、すぐさま始末されてしまう世界。「麦の海に浮かぶ檻」は強烈だ。毒の家系に生まれた子供は常に体に毒の耐性がある。序盤では飲み物に毒を仕込まれたのは、命を狙われているからだと思わせる記述が続く。
紅茶を飲むと体調を崩す。ラストでは飲み物に毒が入っていたのは事実だが、その目的が違っていた。毒を体に入れた少女。そして、その少女に恋をした男の悲劇が描かれている。
全体としていくつか昔読んだことのある短編も含まれてはいる。ただ、理瀬シリーズとして連続で読むとまた感想が異なってくる。読んでいる間に、過去に読んだことがあることを思い出すのだが、この世界観にひたることができて楽しむことができた。
ヨハンや校長はそうでもないが、理瀬の過去や、シリーズを通して読むことで新たに感じることができる雰囲気がある。この学園の独特な世界観というのは、他作品にはないものなのは間違いない。
理瀬シリーズ好きにはたまらない短編だ。