薔薇のなかの蛇 


 2022.8.9      貴族たちのパーティで起こる凄惨な事件【薔薇のなかの蛇】

                     
薔薇のなかの蛇 [ 恩田陸 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
古い洋館で首と胴体が切断された惨殺遺体が見つかる。貴族レミントン一家の長兄アーサー、次兄ディヴが主人公の本作。父親のパーティに参加する者たちの中で、事件の関係者はいるのか。方々から恨みを買う父親。息子たちも良く思っていない。一族に伝わる秘宝を披露したあとに、悲劇が訪れる。

何が起きているのかわからない状態で、物語はすすんでいく。犬が爆発し、その爆破に人間が巻き込まれた痕跡がある。その爆発に父親が巻き込まれたのか。。。父親が行方不明となり、事態は混沌としてくる。ミステリの要素は強いが、それよりも物語全体の雰囲気がおそろしい。アリスの友達であるリゼが何かしらカギを握っていると思わせる流れ。凄惨な遺体が登場してくると、それだけでインパクトがあるのは間違いない。

■ストーリー
英国へ留学中のリセ・ミズノは、友人のアリスから「ブラックローズハウス」と呼ばれる薔薇をかたどった館のパーティに招かれる。そこには国家の経済や政治に大きな影響力を持つ貴族・レミントン一家が住んでいた。美貌の長兄・アーサーや、闊達な次兄・ディヴらアリスの家族と交流を深めるリセ。折しもその近くでは、首と胴体が切断された遺体が見つかり「祭壇殺人事件」と名付けられた謎めいた事件が起きていた。このパーティで屋敷の主、オズワルドが一族に伝わる秘宝を披露するのでは、とまことしやかに招待客が囁く中、悲劇が訪れる。屋敷の敷地内で、真っ二つに切られた人間の死体が見つかったのだ。さながら、あの凄惨な事件をなぞらえたかのごとく。

■感想
貴族のパーティに参加する者たち。アーサーとディブ、妹のアリス。アーサーに紹介しようと女性を連れてくる者たち。貴族のパーティらしく、華やかな雰囲気と招待客たちの上流階級っぽさがこれでもかと表現されている。

父親であるオズワルドの誕生日を祝うパーティではあるが、肝心の父親はあらゆる方面から恨まれており、脅迫状が届くことになる。代々伝わる秘宝をお披露目し、パーティは華やかなまま進んでいくのだが…。ここから、凄惨な事件が立てつづけに起きる。

爆発が起こり、犬の死体と共に人間の体の一部が散らばっている。爆死したのは父親ではないか、という流れから物語は混沌としてくる。基本はアーサーとディヴが事件を推理する。警察が警護している中での爆発であり、そのタイミングで父親が行方不明となる。

警察が厳重に警戒している部屋から煙のように消え去った父親。誘拐されたのか、それとも…。アーサーのおじが毒入りの酒を飲み倒れるという出来事も発生し、明らかに何者かの暗躍を印象付ける流れとなっている。

アーサーへ近づいてきた女が何かしら怪しげな雰囲気を醸し出している。そんな中で、アリスの知り合いであるリセが味方なのか敵なのかが重要な要素となっている。父親は実は隠し部屋に隠れていた。一連の凄惨な事件についてもオチが語られている。

表紙を含め挿絵が独特の絵柄であり、首が長い人間の絵が妙に恐ろしさを増幅させている。物語と挿絵の相乗効果で恐怖が倍増している。貴族たちがパーティを行う洋館で発生した凄惨な事件。それだけで恐ろしくなる。

恐ろしい雰囲気が強い作品だ。



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