日本の「運命」について語ろう 浅田次郎


 2015.6.1      今後の日本を憂う 【日本の「運命」について語ろう】

                     
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■ヒトコト感想

作者の小説作品を読んでいる人ならば納得の作品だろう。作者が講演したものをまとめた作品なのだが、やはり作者の作品に関連した内容となっている。「蒼穹の昴」や「中原の虹」から、中国の歴史について語っている。中国の歴史に関連し、日本の歴史へと移り変わっていく。

特に作者の作品にあるような新撰組や日清日露戦争についてこだわりがあるようだ。歴史を紐解いて、現代への教訓とするのも大事だろう。そして、過去と比べ、現代の日本がどのような状況にあるのか。歴史がすべて正しいとは思えない。過去を美化するというのもあるのかもしれない。それでも、作者独自の解釈がもりこまれた分析というのは、うならされるものがある。

■ストーリー

衆より個の利益を、未来より現在を大切にする今の日本。150年で起きたこの国の「変容」を、知の巨人が深い洞察力と明快な論理で解き明かす。驚きと発見に満ちた、白眉の日本人論。

■感想
正直言うと、中国の歴史については作者の作品を読んで学んだ部分がかなり大きいかもしれない。科挙の仕組みについては、本作を読むことでさらに理解を深めることができた。科挙がエリート中のエリートということは理解していたが、想像よりもさらに壮絶な狭き門だということがわかった。

選りすぐりのエリートたちが国を運営したとしても、過去の中国が衰退したのはなぜなのか。そこに作者独自の分析が入る。昔の中国は今のイメージよりも、奥ゆかしいような印象もある。それは、ヨーロッパの強国に次々と植民地化されたという印象があるからだろう。

日本の歴史については、やはり作者の興味が強烈に反映されている。一番は何と言っても新撰組だろう。「壬生義士伝」から始まり「一刀斎夢録」などからもわかるように、新撰組に強い思い入れがあるのは作者のファンならばすでに常識だろう。

黒船の脅威にさらされたとき、日本の運命が大きく変わってくる。そこでの選択を誤っていたとしたら、今の日本はなかったかもしれない。もしかしたら、香港と同じようにどこかの植民地として長い間過ごさなければならなかったかもしれない。そんなことを考えさせられる作者の言葉だ。

作者の作品を読むと、歴史の勉強になるのは確かだ。面白い物語形式であれば、より記憶にも定着するだろう。もし、自分が高校生の時に作者の作品を読んでいたとしたら、日本史はもう少し成績がよかったかもしれない。タイトルが日本の「運命」とかなり大げさに書かれてはいるが、歴史から学び、現代の日本の行く末を危惧している。

昔に比べると、明らかに個人主義は浸透している。昔のように国のために、なんて人は少ないのだろう。個人的には悪い部分もあるが、個人主義だからこそ、全体として間違ってひとつの方向へ進むことがないような気がする。

簡易的に歴史を学ぶには良いのかもしれない。



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