蒼穹の昴1 


2007.7.16 壮大な物語が始まる 【蒼穹の昴1】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
中国の物語。少年春児とその兄貴分の文秀、二人の覇道の序章ともいうべき本作。古代中国では三国志くらいしか知らない。なじみのない言葉づかいと、難しい名前、そして、複数の呼び名を持つ登場人物たち。正直最初は楽しんで読めるか心配であり、難しい漢字と奇妙な読み仮名で混乱するものと思っていた。しかし、ふたを開けてみると、実際にはすんなりと物語に入り込むことができ、ずっぽりと二人の男の成長物語から目を離せなくなってしまった。今後二人にどのような運命が待ち受けているのか、想像するとワクワクし、早く続きが読みたくてしかたがなかった。

■ストーリー

汝は必ずや、あまねく天下の財宝を手中に収むるであろう中国清朝末期、貧しき糞拾いの少年・春児(チュンル)は、占い師の予言を信じ、科挙の試験を受ける幼なじみの兄貴分・文秀(ウェンシウ)に従って都へ上った。都で袂を分かち、それぞれの志を胸に歩み始めた2人を待ち受ける宿命の覇道。

■感想
糞拾いの少年と科挙となった青年。二人の運命は占い師に予言されていた。冒頭から奇妙な雰囲気をかもし出しながらも、物語は淡々と進んでいく。この時代の中国の厳しい試験制度と、科挙になった人物に対する栄光。そしてさらにその上の進士を目指すものたちの苦悩。最初はなかなか理解できない登場人物たちの相関関係も、読み進めていくうちに自然と頭に入り、その時代の中国の雰囲気を存分に味わうことができる。

科挙から進士になった文秀と対比するように、春児は宦官になる決断をする。この宦官というのは三国志で多少知識はあったのだが、そこに至るまでの苦悩や、その存在意義など物語を通じて感じ取ることができた。古代中国の独特の制度であり、今であれば考えられないことだが、貧しい境遇から一発逆転を目指すための最後の手段という思いをヒシヒシと感じた。

清朝末期の皇室。そして西太后を取巻く人々。権力闘争や派閥争いなど、いつの時代も変わらぬ雰囲気の中、二人はいったいどのようにしてこの中にくい込んでいくのか。本作ではまだ、二人が中央に進出するくだりはない。しかし、いずれ二人は中央において、お互いの
覇道を極めるため対決することもあるのだろうか。考えれば考えるほど果てしなく遠い道のりようにも感じられるが、逆にそれをどのようにして突破するのか、という注目点でもある。

この中国の壮大な物語を、残り三作で存分に楽しもうと思う。

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