中原の虹1 浅田次郎


2010.12.27  蒼穹の昴以上の魅力 【中原の虹1】

                     
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■ヒトコト感想

蒼穹の昴から続く物語。満州を舞台とした、馬賊と漢人、そして日本人を巻き込んだ物語なのだろう。壮大な物語であるだけに歴史的背景を知っていればさらに楽しめるにちがいない。蒼穹の昴を読んでおくことも非常に重要かもしれない。満州という国の行く末が描かれる本作。蒼穹の昴よりも日本人にとってはなじみやすいだろう。最初はとっつきにくさを感じたが、蒼穹の昴のキャラクターや馬賊たちの戦いに対する思いと冷酷非道な行動の数々を読んでいると、自然に物語りにのめりこんでしまう。物語へ引き込む力は蒼穹の昴以上かもしれない。満州の王となるために行動する張作霖。そして息子の張学良など、魅力的なキャラクターによって楽しめ、さらに歴史も学べる。一石二鳥だ。

■ストーリー

「汝、満洲の王者たれ」予言を受けた親も家もなき青年、張作霖。天命を示す“龍玉”を手に入れ、馬賊の長として頭角を現してゆく。馬と拳銃の腕前を買われて張作霖の馬賊に加わった李春雷は、貧しさゆえに家族を捨てた過去を持つ。栄華を誇った清王朝に落日が迫り、新たなる英雄たちの壮大な物語が始まる。

■感想
蒼穹の昴を最初に読んだときの印象に近いが、さらにのめり込み度は強い。満州という日本の歴史上では重要な位置をしめている場所を舞台とするだけに、歴史の教科書に出てきた名前が数々登場してくるだろう。張学良は当然だが、張作霖などから描かれるとは思わなかった。馬賊という最初はまったくイメージできなかったものが、本作を読み終えるころには頭の中にその姿がしっかりと焼きついている。敵だけでなく臆病者にも厳しい馬賊たち。信じられないような残酷な行動も、すべては一つの目的のためなのだろう。

時代背景や歴史的事実を知っているとより楽しめることは間違いない。たとえ知らなかったとしても、本作を読むことでかなり勉強になるだろう。多少ドラマチックな展開になっているとはいえ、結末は歴史から大きく外れることはないはずだ。予言によって登場人物たちの未来がおぼろげながら見えてくる。これは蒼穹の昴と同じ手法だが、本作は主要キャラクターがかなりいるので、恐らく物語としての山場はかなりの数になるだろう。西太后や袁世凱など、歴史上の有名人であり、蒼穹の昴の主要キャラクターも登場し、さらには主役まで登場する。蒼穹の昴は絶対に読んでおくべきだ。

物語の導入部としてはこれ以上ないほど魅力に溢れている。満州がどうなるかというのはわかっているだけに、このキャラクターたちがどうなるのか。そして、関東軍を率いる日本人たちとどのような関係が描かれるのか。作者独自の想像力で、歴史の隠された裏側をのぞき見るようで非常に興味深い。なじみのない中国の歴史ではなく、日本にも大きな影響を与えた出来事だけに、興味がある。さっそく作中でも日本人の扱い方についてかなり特殊な描かれ方をしている。強烈な物語になることは間違いないだろう。

漢字の難しさに慣れてしまえば、サクサク読めて楽しめるだろう。

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