標的走路 


 2025.6.27      佐久間公シリーズのスタートはここから 【標的走路】


                     
標的走路〈新装版〉 失踪人調査人・佐久間公 : 1【電子書籍】[ 大沢在昌 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
作者の佐久間公シリーズとしては「感傷の街角」「漂白の街角」「追跡者の血統」などがある。この元祖というべき幻の作品が新装版として発表された。まだ駆け出しの佐久間が活躍する物語だ。大沢在昌の今の作品と比べると、やはり読みづらさというか未熟な部分が多数目につく。特に会話のシーンでは今は誰の会話なのかがわからなくなる場合もある。

ただ、それを抜きにしても佐久間が都合よく強くてかっこいいというパターンではなく、それなりに普通の人というのが良い。ハードボイルドプラス、密室殺人のような様相があり、四苦八苦しているのもうかがい知ることができる。序盤から車を爆破されるなど、すでに佐久間自身が激しくターゲットとされているのもポイントだ。

■ストーリー
法律事務所の失踪人調査人・佐久間公の乗る車に爆弾が仕掛けられていた。幸い難を逃れた公だが、犯人が誰だかわからない。そんななか、銀行の頭取令嬢の依頼で失踪した恋人を探してほしいと言われるが・・・・・・大沢ハードボイルドの原点、ここに復活!

■感想
シリーズのスタートが本作なのだろう。のちのシリーズに登場する沢辺もしっかりと登場している。ハードボイルドとしての行動は、やはり時代のせいなのかもしれないが、かなり古臭さを感じてしまう。今読むとまさに化石に近いような記述もある。

バブルを迎えたころの新宿や渋谷を描いているので、出てくる小物や車も時代を感じさせる流れとなっている。BMWを燃やされただとか、携帯電話が存在しないので、外部との連絡がとれないだとか。。。時代を感じことは間違いない。

石油利権を描いた本作。謎の中東の国の出身者が実は別人に化けていただとか。。人の捜索がメインとなってはいるのだが、かなりきな臭い状況となっている。佐久間自身が何者かに狙われている。車を爆破されるにとどまらず、他のタイミングでは爆弾を使われたりもする。

そこまで恨まれているにも関わらず、本人はかなり楽観的なのが印象的だ。そのほか、警察組織や政府の特別な組織から失踪人の捜索を依頼されたりもする。人探しがメインではるが、後半ではそれらキーマンたちが一堂に山荘に集まり閉じ込められるシーンも登場してくる。

ハードボイルドでありながら、どこか本作ミステリーを意識した流れとなっている。他シリーズと比べても、読んでいて違和感を覚える部分は多々あるのだが、なんだか妙に思いっきりが良いように思えてくる。佐久間が細かなことは考えずに突っ走るというのもあるのかもしれない。

バブル全盛の時代には、ハードボイルととしてのキャラは定番としてあるのだろう。ここからブラッシュアップされて佐久間公というキャラができあがったとなると、感慨深いものがあるのは間違いない。

初期作品としての面白さがある。



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