米澤穂信と古典部 


 2018.6.25      完全なファンブックだ 【米澤穂信と古典部】

                     
米澤穂信と古典部 [ 米澤 穂信 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
古典部シリーズが好きな人にはたまらない作品だろう。米澤穂信の「氷菓」から始まるシリーズ。本作はひたすら古典部の内容と、それに付随する作者の作品に対する考え方などが語られている。がっつりと米澤穂信のファンであればもちろん楽しめるが、古典部シリーズの初心者やこれから読む人にもおすすめかもしれない。

オマケ的な要素?として折木の中学時代の読書感想文がある。これがかなり屁理屈全開で、こんな中学生の担任教師にはなりたくないと思うタイプだ。個人的には米澤穂信は古典部シリーズよりも、「満願」のようながっつりとした骨太なミステリーや「インシテミル」のようなパターンの方が好きなだけに、本作は微妙に感じた。

■ストーリー
ある日、大日向が地学講義室に持ち込んだのは、鏑矢中学校で配られていた「読書感想の例文」という冊子。盛り上がる一同に、奉太郎は気が気でない――。書き下ろし新作短編「虎と蟹、あるいは折木奉太郎の殺人」の他、古典部メンバー四人の本棚、著者の仕事場や執筆資料も初公開!『氷菓』以来、米澤穂信と一五年間ともに歩み、進化を続けている〈古典部〉シリーズについて「広く深く」網羅した必読の一冊。

■感想
米澤穂信の代表作である古典部シリーズ。日常の謎について描いた学園ミステリーモノだが、同じく日常の謎を描く北村薫などとの対談もある。作者の人となりがわかるエッセイなどは描いていないだけに、今まで米澤穂信がどのようなタイプかわからなかった。

本作では写真付きでインタビューや対談や質問などもある。作者の写真は常にネクタイをきっちり締めてメガネ姿はまるで公務員のようだ。作者自身も作家になっていなければ、公務員になっていたと語るほどだ。

古典部シリーズが描かれたいきさつや、作中のキャラクターにどのような思い入れがあるかまで様々なことが語られている。おまけにメンバー四人の本棚や作者の仕事場まで。キャラクターの本棚の中には、自分が読んだことのある本があると、なんだかうれしくなる。

架空のキャラクターなので、あれこれ好き勝手なことを言えるのかもしれないが…。作者がイメージするキャラがよりはっきりするようで良い。強烈なインパクトはないのだが、古典部シリーズのファンにはたまらないだろう。

折木の中学時代の読書感想文が、オマケとして収録されている。これが強烈だ。「山月記」でトラになってしまった人間が登場するのだが、そのトラが人間の言葉を話すのはおかしいと考え、独自の推理を展開する。

これが屁理屈を通り越して論理的な流れとなっているから恐ろしい。トラが人間の言葉を話すはずがないという流れから、別の解を見つけ出す。そして、なぜトラが話すなんてことになった理由までも考えてしまう。予定調和をぶちこわす感想文だが、これはこれで面白い。

古典部ファンならば間違いなく買いだろう。



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