終わりなき夜に生れつく 


 2017.9.27      在色者のバックグラウンド 【終わりなき夜に生れつく】

                     

評価:3
恩田陸おすすめランキング
■ヒトコト感想
夜の底は柔らかな幻」で登場した”在色者”の物語。基本的には「夜の~」を読んでいる前提の作品だ。夜の~で壮絶な強者同士の戦いが描かれていたのだが、その強者たちのバックグラウンドが語られている。在色者の圧倒的な能力の恐怖は夜の~で語られており、普通とは違う人材がどのような生活をすごしてきたかが興味深い。

強力な力を持つ傭兵はどのような青年時代を過ごしたのか。入国管理官となるのはどのようなきっかけからか。カギとなる人物が登場し、まだ初々しい雰囲気を醸し出している。ミステリー的な流れもあり、夜の~が好きな人は間違いなく楽しめるだろう。夜の~を読んだことのない人が読んでも、それなりに楽しめるよう説明が付け加えられている。

■ストーリー
強力な特殊能力を持って生まれ、少年期を共に過ごした三人の“在色者”。彼らは別々の道を歩み、やがて途鎖の山中で再会する。ひとりは傭兵、ひとりは入国管理官、そしてもう一人は稀代の犯罪者となって。『夜の底は柔らかな幻』で凄絶な殺し合いを演じた男たちの過去が今、明らかになる。

■感想
在色者は圧倒的な力を持つ。夜の~で激しい戦いを繰り広げた3人の強者たちのバックグラウンドが語られている。物静かで一匹狼の男は、その強烈な能力を隠しもっていた。ただ、見る人が見れば気づかれる能力のため、入国管理官にスカウトされてしまう。

強力な能力を持つ者は、平穏な生活は絶対にできない。このあたり、強者ゆえの悲しい宿命は強烈だ。どんなに在色者としての能力を隠したとしても、巨大な力を持ってしまったからには、あらゆる方面から注目される存在となってしまう。

在色者の能力の恐怖をあらためて思い出してしまった。手を触れることなく相手を殺す能力。一般人からすれば、忌避すべき存在でしかない。AKIRAの超能力をイメージすれば良いのだろう。SF全開の物語として強者たちがどのようにして育ってきたかが語られている。

特殊な能力を持った3人がそれぞれ別の道を歩む。その過程で、そうなるべくしてなるエピソードもある。それぞれのキャラクターがはっきりと分かれているのも良い。3人の強者たちはポッと出てきたわけではないという説得力が生まれてくる。

本作を読んだ後に夜の~を読むのもありかもしれない。または、もう一度、夜の~を読み直すとか。恩田陸のこの手のSFはつい最近も「失われた地図」を読んだが、本作のシリーズの方が断トツに良い。超能力戦争のような雰囲気がある。

自分がこの手の作品が好きというのもあるが、同じ雰囲気の「新世界より」と内容が混同してしまう場合もある。なんとなくだが深夜アニメやハリウッド映画になってもおかしくない題材かもしれない。まぁ、映像化したら失敗するのだろうが…。

恩田陸のSF作品が好きな人には外せない作品だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp