夜の底は柔らかな幻 上  


 2013.6.13      夢の対決が待ち受ける 【夜の底は柔らかな幻 上】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

冒頭から特殊な言葉のオンパレードで、いったどんな世界で何がテーマなのかまったくわからなかった。が、すぐにこの物語にのめりこんでしまう。謎の国、途鎖国。そして、そこで登場する超能力を持つ在色者。これだけでやられてしまった。

ウラやウチなど、特殊な用語がでてくるが、それらは物語を読んでいけば自然と理解できる。超能力を持つ者たちと持たない者たち。現代の日本の物語のようで銃やライフルが登場するが、何よりも在色者の能力が一番の武器になる。上巻だが、すでに強烈なインパクトがある。雰囲気はどことなく貴志祐介の「新世界より」に近い。力を持つ者たちがすべてを支配するのか、それとも…。主要人物たちが向かう山にはいったい何があるのか。気になって仕方がない。

■ストーリー

犯罪者や暗殺者たちが住み、国家権力さえ及ばぬ無法地帯である〈途鎖国〉。特殊能力を持つ〈在色者〉たちがこの地の山深く集うとき、創造と破壊、歓喜と惨劇の幕が切って落とされる――

■感想
不思議な力をもつ在色者。その超能力はひとりで何人もの人を一瞬で殺すことができる。物語は現代の日本の中で、治外法権の場所である途鎖国を舞台にくりひろげられる。一年一回起こる不可思議なイベントをめざし様々な思惑をもった者たちが集う。

ある者は警察組織、そしてあるものは裏の組織。超能力を生まれながらにもつ者から、人工的に力を得た者まで、複雑にからみあう世界では、一瞬でも目を離せない緊迫感がある。物語の登場人物たちの、能力の強さのランキングが未知なため、突如対決シーンになると、どうなるのかワクワク感が止まらない。

「新世界より」のように圧倒的な力をもつ者が、さらに巨大な力に出会うだとか、山で育ったすべての鍵を握る3人の男の存在だとか、興味を惹かれる素材は盛りだくさんだ。主人公である実邦にどのような能力があるのかは、今の段階ではわからない。が、激しい戦いに巻き込まれるのは確実だろう。

まるで上質なSF映画を見ているような気分にさせられる展開。言葉の意味が曖昧なまま物語は進んでいくのだが、いわくありげな雰囲気をより一層高める役目をはたしている。この雰囲気は作者の作品でなければ出せないだろう。

実邦と行動を共にする捜査官。基本はこの二人をベースに物語は進むのだが、何かしら激しい戦いが起こるのは間違いないだろう。謎の組織や、実邦と偶然にも同じ電車に乗り合わせ、人工的に力を手に入れた者の存在など、物語を複雑に、そして、力関係を曖昧にする要素は多数ある。

下巻では、それら力が未知数の者たち同士の戦いが起こるのは間違いない。そうなったとき、実邦が目的を果たすことができるのか。謎の子供はどんな力をもち、どうなっていくのか。先の展開が気になって仕方がない。

アニメや映画になるほど、夢の対決的なワクワク感がある。




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