2014.10.15 70年代後半の書評 【ペーパーナイフ 路上の視野2】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
70年代後半、作者が描いた書評集。自分が生まれる前の作品や、まったく知らない作家の作品が取り上げられている。当時どのような作品が流行ったのかや、作家として注目を集めた人物についても語られている。向田邦子や石原慎太郎などはわかる。井上やすしなどもわかるし、作者の他作品で登場してきた作家もわかる。が、その作品を読んだことがないのでなんとも言えない。
ただ、時代の雰囲気は強烈に感じることができる。事件としてどんなことが起こり、それについて描かれた作品は、何が話題になったのか。テレビで昭和史の特集をやる際に登場してくるような、過去の伝説的出来事をリアルに感じていた時期なのだなぁと思わずにはいられない。70年代後半をリアルに感じていた人たちには、たまらない作品かもしれない。
■ストーリー
著者は少年時代に、もし読書ノートをつくるなら表紙に「本を噛む」と書きたいと思ったそうだ。どんな作家にも呑み込まれないぞ、いやそれどころかその本を自分の歯で噛みしだいてやるのだ、という気負いがあったためという。優れた読み手との評判を得た連載書評と、井上ひさし、田辺聖子、向田邦子等の作家論を収録。
■感想
70年代後半の作品の書評集なので、当然、自分が読んだことのある作品はないものと思っていた。それが、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」がでていたことには驚いた。唯一といってもいい、本作に収録された書評で既読の作品だった。
まだデビューしたての村上龍について、今後、息の長い作家となれるかについて疑問を呈している。結果としては、作者の予想ははずれている。売れっ子作家となった村上龍も当時は、その作品の先進性から、多くの批判を受けたのだろうと想像できた。
その他には、時代を感じる作品ばかりが印象に残っている。ロッキード事件についての作品や安宅の事件など、今では、はるか過去の事件として扱われているものを、リアルに感じていた時期なのだろう。時代を感じるのは当然のことだが、中には時代を突き抜けて、今でも読みたくなるような作品もある。
特に、事件のノンフィクション系の作品は、作者の書評を読むと、強烈に読んでみたくなる。「地雷を踏んだらさようなら」なんてのは、タイトルは知っていたが、読んでみたくなった。
作者の他の作品を読んでいることで、理解できるものがある。山口二矢や、エディ・タウンゼンについてなどは、「テロルの決算」や「一瞬の夏」を読んでいたからこそ、すんなりと入り込むことができた。時代的には作者の駆け出しのころにあたる本作。
それでも、ある一貫したテーマや、作者が好んで取り上げるものは変わっていないので、それほどの驚きはない。強烈なインパクトはないのだが、作者のファンならば、初期の作者の勢いというのを感じることができる貴重な作品だ。
すでに手に入らないかもしれないが、昔のノンフィクションを読んでみたくなった。
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