テロルの決算 


 2014.2.5    17歳が起こしたテロ 【テロルの決算】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

山口二矢という人物についてまったく知識がなく、右翼や左翼についても特別な思想はない。そんな自分が読むと、政治的知識の無さから作品の良さをほとんど理解できなかった。正直言うと、30年近く前の政治状況には興味がない。そのため、二矢が暗殺した経緯や社会党党首の浅沼についてもなんの感想もなくツラツラと読み進めただけだった。

ただ、17歳の少年が自分の意志で政治家を暗殺することの衝撃は伝わってきた。いったいどんな育ち方をすれば、こんな少年になるのか。作中では親の影響や周りの影響と描かれている。時代が時代だけに、思想に生きるなんてことは、当時はありえたのだろう。今の若者とは対極をなすような人物だ。

■ストーリー

少年の刃が委員長の胸を貫いた瞬間から社会党への弔鐘が鳴った。テロリストと野党政治家が激しく交錯する一瞬を描き切るニュージャーナリズムの傑作。

■感想
暗殺事件について知らなければ、山口二矢という人物についても知らない。当時の政治的状況や浅沼についてもまったく知識がない。そんな状態で読むと、政治の説明の部分は読むのに苦痛をともなうものだった。日米安保が成立する時期、自民党や共産党、社会党の力関係や政治家についてもほとんど理解できなかった。

そのあたりの時期の政治に詳しければ、乱立する政治家の名前についてもイメージでき、作品にのめり込めるのだろう。少しでもなじみのある政治家が登場すれば…。30年以上前の話なので、それは無理だった。

暗殺された浅沼について、二矢に負けないほど詳しく描かれている。そのため、浅沼がどのような人物で政治的立場がどうであったかはよくわかった。ただ、自分の知識と照らし合わせたとき、何かしら納得できるものがあればよかったのだが…。

そもそも政治に興味がなく、右翼だとか左翼だとか、自民党だろうと社会党だろうとほとんど区別なく読んでいたので、浅沼の政治的成果や影響など、ほとんど理解できなかった。浅沼の立場が理解できなかったので、二矢の行為に対する感想も、半減しているのかもしれない。

17歳の少年がひとり、自分の思想から政治家を暗殺する。そのことの衝撃は伝わってきた。右翼にかぶれたからといって、自分の人生をなげうってまで相手を暗殺する必要があったのか。まるで戦国時代の武士のように、自分の信念を貫き、目的を達成したあかつきには自害する。

17歳は子供だが、善悪のわからない年齢ではない。だからこそ、本人の意思で決行されたことについては、衝撃を感じずにはいられない。もし、自分の同級生が山口二矢だったら、間違いなく友達にはなれなかっただろう。

今も、これからも、本作のような事件は起こらないだろう。



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