六月の夜と昼のあわいに  


 2011.11.15  相当に高いハードルだ 【六月は夜と昼のあわいに】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

非常に難解。短編集なのだが、その中ですんなりと物語が理解できたのは、半分程度かもしれない。ミステリー的な作品と、SFやファンタジーはわかりやすく、作者の魅力が十分にでていると思う。何か得体の知れない能力的なものや、生まれた瞬間から自分の天才性に気づいた子どもの話など、奇妙さの中に面白さが備わっている作品だ。印象的な作品は、ストーリー的にもわかりやすいものばかり。それ以外に、何を言いたいのかよくわからないものや、あまりに幻想的すぎて、頭の中で情景が想像できないものは、評価が難しい。詩的なものや、脳内での妄想話的なものは文字を追ってはいるが、頭の中にまったくストーリーが入ってこなかった。なかなかハードルが高い作品であることは間違いない。

■ストーリー

よび覚まされる記憶、あふれ出る感情、たち上がる論理。言葉によって喚起される、人間のいとなみ。ミステリー、SF、私小説、ファンタジー、ルポルタージュ…あらゆる小説の形式と、恩田作品のエッセンスが味わえる「夢十夜」的小説集。

■感想
作者の幻想的な雰囲気が好きな人や、不思議な能力のSFが好きな人には一部受け入れられるかもしれない。ほぼすべてが現実味のない話であり、異常さすら感じてしまう。一瞬、エッセイ的なものなのかと錯覚することもあったが、よくわからないまま読み進めるしかない。読む側にもそれなりの能力が必要となる作品だ。それぞれの短編には、作品内容をイメージする?ような絵があり、それが幻想的な雰囲気に拍車をかけている。中にはピカソ的な不可解な絵があり、内容も不可解なまま終わる作品もある。

特殊な能力をもった人物の話や、生まれた瞬間から自分の特殊さに気づく話などは面白かった。これぞ作者の真骨頂と言うべき作品だろう。ただ、短編ということでコンパクトにまとまっているのは良いが、物足りなさはある。この題材をそのまま中編なり長編なりにすれば面白くなりそうな作品もあった。作者のファンならば、おそらく読んだ瞬間に、感じるものがあるだろう。どことなく「常野物語」や、「ユージニア」を彷彿とさせるような作品もあった。ただ、大多数は幻想的で理解困難な作品なのは間違いない。

詩的な表現と、妄想を文章にしたような物語であれば、ストーリーを理解するのは困難だが、幻想的な雰囲気というのは感じることができるだろう。「いのちのパレード」でも多少感じたことだが、「いのちのパレード」以上に本作の方がダントツで理解しずらい。この難しさのまま長編にされると途中で投げ出してしまう可能性もあるが、短編なのでかろうじて読めたという感じだろうか。もしかしたら売れる本というものよりも、作者が書きたいことを書いた結果が本作なのだろうか。大衆受けしない作品であることは間違いない。

作者のファンならば読んでいいかもしれないが、それ以外は厳しいだろう。




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