おまえさん 上  


 2012.3.23   キャラの魅力凝縮 【おまえさん 上】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

ぼんくら」「日暮らし」に続くシリーズ。「ばんば憑き」では外伝的な物語まであり、すでにこのシリーズはかなりキャラクター付けされている。本作ではそのキャラクターたちが大活躍する。今までのシリーズを読んでいなくても楽しめるよう工夫されているが、シリーズを読めばさらに楽しめるだろう。今回は、薬の調合をおこなう”ざく”と、新薬開発にまつわる因縁の事件がおこる。メインの事件だけでなく、あいまには、ちょっとした事件が起こる。それらが”ざく”の事件と関係があるのか。読んでいくうちに、別の事件や出来事に繋がるようなキーワードが登場し、最後にはなんらかの繋がりが見えてくるような気がする。長大な物語ではあるが、1つの事件に集中するのではなく、様々な出来事がおこるので、飽きずに読むことができる。

■ストーリー

痒み止めの新薬「王疹膏」を売り出していた瓶屋の主人、新兵衛が斬り殺された。本所深川の同心・平四郎は、将来を嘱望される同心の信之輔と調べに乗り出す。検分にやってきた八丁堀の変わり者“ご隠居”源右衛門はその斬り口が少し前に見つかった身元不明の亡骸と同じだと断言する。両者に通じる因縁とは。『ぼんくら』『日暮らし』に続くシリーズ第3作。

■感想
シリーズのいつものキャラクターが大活躍する。本作では特に平四郎と、将来有望だがブ男の信之輔、そして、天才的頭脳をもつ弓之助が大活躍する。事件としては、新薬開発にまつわる因縁が元となる事件と、八百屋のおかみを襲った仙太郎の事件と、女好きの主人の下に嫁いだ女がすぐに離縁を言い渡された出来事がある。それらはまったく関係ないようだが、何かしら繋がりがあるのだろう。仙太郎は富くじで大当たりを当て、神様のように崇められ、当たった金をあっという間に使い切ってしまう。新薬の事件ではその富くじが何かしら意味があるように語られている。

長大な物語ではあるが、1つの事件をひたすら追い求めるのではなく、そのあいまには別の出来事がおこる。女好きの主人の趣味は、食うにも困る女を拾ってきては、身奇麗にし妻としてむかい入れたかと思うと、次の女を探し出そうとする。ボロボロの女を綺麗にすることだけを生きがいとした、奇妙な男のエピソードも、メインの事件と何かしら関係があるのだろう。見た目的なはなしで言うと、十手の使い手ではあるが、見た目がブ男なため、女に積極的になれない信之輔にも、何かしら影響がある部分なのかもしれない。

本作で新たに登場した”ご隠居”源右衛門が特殊な役回りをしそうだ。隠居としてまわりから疎まれているが、平四郎たちにより、その存在意義をはっきしはじめる。長年蓄積した知恵を思わぬところで生かすのだろうが、事件解決にどのように関わるのか。連続辻切り事件がすべて同一犯の犯行と見破り、その後様々な推理をする。ホームズ役である弓之助とご隠居のコンビは、もしかしたら名コンビになるのかもしれない。まだどのような結末になるか見えてこないが、因縁めいた事件の真相は、一筋縄ではいかない物語なのだろう。

シリーズの面白さが凝縮されている。




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