模倣犯4 宮部みゆき


2010.3.15  ピースの圧倒的な存在感 【模倣犯4】

                     
■ヒトコト感想
時系列的には1巻の続きというべきなのだろう。栗橋と高井が事故で死に、事件は解決となるはずだが、読者だけはまだ真の黒幕がいることを知っている。第一発見者の真一と樋口めぐみの関係が本作にどのような関連があるのかやっと見えてきた。高井由美子という加害者の身内の行動によって、樋口めぐみと同様の気持ちを引き出そうとしている。しかし、読者としては内情を知っているだけに、めぐみとはまた違った印象を持つことになる。そして、本作ではとうとうあのピースが表舞台へと登場してくる。ここからラストに向かうまで、ピースこと網川がどのように追い詰められていくのか。張り巡らされた伏線を最後の5巻でしっかりと回収できるのか。網川の最後というのが想像つかないだけに、興味がわいてくる。

■ストーリー

特捜本部は栗橋・高井を犯人と認める記者会見を開き、前畑滋子は事件のルポを雑誌に連載しはじめた。今や最大の焦点は、二人が女性たちを拉致監禁し殺害したアジトの発見にあった。そんな折、高井の妹・由美子は滋子に会って、「兄さんは無実です」と訴えた。さらに、二人の同級生・網川浩一がマスコミに登場、由美子の後見人として注目を集めた―。終結したはずの事件が、再び動き出す。

■感想
1巻で事件が決着し、3巻で事件の裏側が描いている。本作は1巻のその後、犯人が明らかとなったとき、世間はどのように騒ぎ、被害者家族や加害者家族たちがどうなっていくか。そして、マスコミがこぞって真相を探ろうとする。滋子がルポという手法で事件を描き、それに振り回されるように高井由美子や被害者家族たちの行動が描かれている。まず、事件の流れからいって、どう考えても新たな犯人を見つける流れとはならない。それがどうやってピースにまで行き着くのか。かすかな伏線が張られている本作。そのかすかな手がかりから、ピースにまでたどりつけるのか。強引な手法でないことを祈るばかりだ。

本作ではとうとう本名で登場したピース。網川として高井由美子に近づき、事件をかき回すため、由美子になんらかのマインドコントロールをほどこしているのだろう。憎たらしいほど正論を吐き、味方には好感を持たれ、敵対するものには、圧倒的な正義を示す。ここまで完璧なまでのピースの動きを見せられると、逆にそれにひっかかる高井由美子に嫌悪感をおぼえてしまう。本作では徹底的に加害者の身内に対して、なんらかの小憎らしい印象を与えるようにしているのだろう。ラストまでそれが続くとは思わないが、高井由美子には良い印象を持つことは無いだろう。

網川が動き出すその裏では、警察が事件のアジトを探し出そうとする。”建築家”という人物が鍵となるのは確実だろう。そこで容疑がピースに行き着いたとき、ピースがどのように動き出すのか。冷静沈着でだれにでも好感を持たれるピース。正義感溢れるその振る舞いが、すべてなんらかの目的のために行われたことなのだろう。底知れぬ力を秘めているようなピースの最後が気になって仕方がない。それと共に、事件をミスリードしつつある滋子がどのように懺悔するのか。マスコミのあり方も気になる今後だろう。

本作は、ラストに向かうまでの最後の山場だ。

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