朝比奈さんと秘密の相棒 


 2025.6.17      理事長の娘と二重人格の男 【朝比奈さんと秘密の相棒】


                     
朝比奈さんと秘密の相棒 [ 東川篤哉 ]
評価:3
東川篤哉おすすめランキング
■ヒトコト感想
東川篤哉の新シリーズ。今まで、お嬢さまと執事や、野球好きの者たち南武線沿線に住む者たちなど、特殊な人々を主人公としたミステリーを描いていた。さすがにネタ切れ感が強くはなっているが、今回は学園の理事長の娘と、ビンタされると人格が変わる男の物語となっている。理事長の娘である朝比奈さんは、ステレオタイプなお嬢さまキャラであり、「謎解きはディナーのあとで」と同じお嬢さまキャラがベースにある。

そのため、流れは同じ。名探偵役が執事なのか、それとも本作のように二重人格の兄が現れるのかの違いでしかない。あとは、学園内での様々な事件がベースとなっている。東川篤哉のいつものキャラクターとしての面白さをメインとしている。

■ストーリー
理事長の娘・朝比奈麗華は大のミステリ好き。密室盗難事件、プールサイド昏倒事件…etc、今日も学園で起きる事件を解決しようと現場に出向く。相棒であるミステリ研究会の石橋くんは、昼行灯のような捜査ぶりだが、あるとき突然推理が冴えわたりはじめ……。

■感想
学園の理事長の娘ということで、高飛車であり、他の生徒たちからも恐れられている朝比奈さん。作者の作品としては割と定番的なキャラクター描写であり、学園内での先輩であっても呼び捨てにするキャラはわかりやすい展開となっている。

そんな朝比奈さんと偶然知り合いになったミステリー研究会の石橋守が物語の狂言回し役となる。朝比奈さんに虐げられる役割であるので、守は下手にでて、朝比奈さんを立てるような役割となっている。この疑似的な主従関係というのが物語のポイントかもしれない。

守は探偵役ではない。朝比奈さんが事件をかき回し、そして、なんだかんだありながら守をビンタするシーンが登場する。その瞬間に守の人格は双子の兄である渡に変化する。名前のとおり石橋を守るように慎重な守と、石橋を渡るように前にすすめる渡る。

わかりやすいように渡の人格は名探偵ぶりもそうだが、朝比奈さんに対して麗華と下の名前で呼び捨てしたりもする。この人格の変化と、朝比奈さんはいつの間にか渡に恋をしているような雰囲気となっている。

連作短編集であり、本作のラストの短編では渡が自分の人格を理解し、守もうっすらとそのことを理解する流れとなる。二重人格での展開が終わりのような渡の言葉が気になるところではなるのだが…。

ラストの短編ではビンタで簡単に人格がチェンジし、そのまま今の状態が石橋渡なのか守なのかわからない状態というのも面白い。朝比奈さんのキャラは作者の定番ではあるが、このシリーズがこれから続いていくのか、それともすぐに終わるのか。今の段階ではよくわからない。

朝比奈さんのキャラは定番的すぎる。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
*yahoo.co.jp