竜とそばかすの姫


 2022.12.28     スズの声優の棒演技が気になる【竜とそばかすの姫】

                     
竜とそばかすの姫 Blu-rayスタンダード・エディション [ 中村佳穂 ]
評価:3

■ヒトコト感想
ノベライズ版はすでに読んでいる。やはり映像と曲があるのでかなりイメージが違う。ネット上の仮想世界の物語であり、どこかしら同じ監督の「サマーウォーズ」に近いものを感じてしまった。仮想世界で歌姫ベルとして脚光を浴びてしまったスズ。まずこの仮想世界の描写がすばらしい。世界各国と繋がり、ネット上にある第二の世界という感じだ。

そこで大暴れする竜。なぜ竜が暴れるのかはよくわからない。というか、仮想世界の中での物語が妙に希薄に感じてしまった。現実世界でのスズのちょっとした恋愛模様も、なんだかとってつけたようなキャラばかりが存在している。全体を通して最も違和感を覚えたのはスズの声優だ。歌をメインで考えたのだろうが…。あまりに違和感がありすぎる。

■ストーリー
50億人がすれ違う美しくも残酷な仮想世界。ベルの歌声は世界を変える――自然豊かな高知の田舎に住む17歳の女子高校生・内藤鈴(すず)は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。曲を作ることだけが生きる糧となっていたある日、親友に誘われ、全世界で50億人以上が集うインターネット上の仮想世界に参加することに。

「U」では、と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。数億のが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。

そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。やがて世界中で巻き起こる、竜の正体探し(アンベイル)。「U」の秩序を乱すものとして、正義を名乗るたちは竜を執拗に追いかけ始める。「U」と現実世界の双方で誹謗中傷があふれ、竜を二つの世界から排除しようという動きが加速する中、ベルは竜を探し出しその心を救いたいと願うが――。

現実世界の片隅に生きるすずの声は、たった一人の「誰か」に届くのか。二つの世界がひとつになる時、奇跡が生まれる。もうひとつの現実。もうひとりの自分。もう、ひとりじゃない。

■感想
仮想世界の仕組みはすばらしい。自分の分身を作る際にも、自分の生体情報と写真から似たような形となる。ベルとして生まれ変わったスズが、現実ではできないことをする。内気な女子高生が、ネットの世界で歌の才能に目覚め、注目をあびる。

スズの友達のヒロちゃんが良い味をだしている。ネットに詳しく事情通であり、現実世界でも人間関係の機微をわかっている。スズはヒロちゃんがいることでかなり助かっている。現実世界でのちょっとした恋愛シミュレーションゲーム的な展開はわりとありがちだ。

メインはベルの歌と映像なのだろう。ベル=スズで、歌メインで声優を選んだのだろうが…。スズの声に常に違和感をおぼえた。やはり周りの俳優やプロの声優と比べると違和感しかない。「風立ちぬ」の庵野くらいの違和感だ。

これがプロの声優であれば現実世界の恋愛パートもそれなりに楽しめたことだろう。歌は確かにすばらしい。仮想世界の中のインパクトある映像もすばらしい。ベルは世界的に人気だが、スズは現実世界では冴えない存在、という位置づけかと思いきや、現実世界でも少しモテているのも違和感がある。

竜の存在意義がわからない。仮想世界の中で暴れまわっているので、自警団のようなものから追われている。竜がなぜ暴れるのか。現実世界での不遇を嘆く意味があるのか。竜がいくら仮想世界で暴れたとしても、現実世界には何の変化もない。

竜とベルとの交流は映像的には「美女と野獣」を意識したのだろう。竜が本作の中に存在する意味がほとんど感じられないため、ラストの展開を作りためだけにいるように思えてしまう。基本的にはベルの歌声と映像を楽しむべき作品だろう。

意外にも現実世界の恋愛模様のパートが楽しめた。



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