コメンテーター 


 2024.1.24      悩むのがバカらしくなる? 【コメンテーター】


                     
コメンテーター [ 奥田英朗 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
伊良部医師のシリーズ。大人気シリーズの久しぶりの第4弾ということでかなり楽しみだった。「イン・ザ・プール」「空中ブランコ」「町長選挙」に続く短編集。相変わらずの伊良部の切れ味鋭い治療が良い。登場してくる患者は、現代の世相に合わせて精神的な病にかかっており、苦しんでいる。伊良部の適当と思われる治療が良い方向へと流れていく。

コメディの物語ではあるが、本作は同じような精神的な病の人の治療にも役立つのではないか?と思えてきた。適当なアドバイスは馬鹿らしく感じるが、それを笑って経験できるということは精神的な病が治療できているということ。伊良部の言うとおりにしていると、いつの間にか病が完治しているという魔法の治療となっている。

■ストーリー
累計290万部の人気シリーズ17年ぶりに復活! 低視聴率にあえぐワイドショーのスタッフの圭介は、母校のつてで美人精神科医をコメンテーターとしてスカウトしようとする。が、行き違いから伊良部とマユミが出演することに。案の定、ふたりは放送事故寸前のコメントを連発するが、それは暴言か、はたまた金言か!?

■感想
表題作である「コメンテーター」は伊良部をコメンテーターとして使うことになったテレビマンの物語だ。プロデューサーが視聴率に縛られた人物であり、精神的に脅迫症のような状態となっている。それが伊良部のぶっ飛んだコメンテーターぶりがヒットし高視聴率を出すことに成功するのだが…。

テレビマンの苦悩と無茶苦茶な伊良部の言動が良い。特にコロナ渦でのへんてこなことを、普通の人は絶対に発言しないであろうタブーを伊良部がコメントするのが良い。気持ちよくなる作品だ。

「ラジオ体操第2」は、怒りを表に出せない男が、伊良部の行動を見て変わっていく物語だ。昨今話題のあおり運転や路上での喫煙に対して文句が言えずに精神的に病んでいる男が、変化していく。怒りを貯めたことにより精神に異常をきたす。

伊良部は治療として怒りを爆発することを提案するのだが…。普通の人にはそれはできない。ただ、伊良部の馬鹿らしい行動を見て男がとった行動が最高だ。怒りを感じて抗議をしてさらに相手が攻撃的に来た場合…。この返しは最高だ。

「うっかり億万長者」は、デイトレーダーは10億を稼ぐことに成功したのだが…。友達もいない毎日に精神がおかしくなる。この短編のみ治療という名の金を使うことに終始する。デイトレーダーは普通の友達がいて家族に囲まれる生活がしたいのだが…。

伊良部が出した案は金を使いきること。ただ、それもできないので男がとった行動は…。デイトレーダーが苦しむ現実は理解できる。いくら金があっても使う暇がなく毎日家にいるだけというのはおかしくなるのは間違いないだろう。

本作は精神病患者への治療にも使えるのではないか?と思えてきた。



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