イン・ザ・プール 


2006.10.23 誰もが覚えのある現代病 【イン・ザ・プール】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
精神科に訪れる様々な患者を面白おかしく、変な医者が治療とは思えないようなことをしながらいつの間にか治していく。そんな話なのだが、このような作品では医者がどれだけ興味深いキャラクターであるか、それにかかっている。本作の医者は治療らしい治療もせずカウンセリングをすることもない、やっていることはとんでもないのだが、いつの間にか患者を正常に戻している。医者のキャラの濃さはインパクトがあるのだが、患者の症状が現代病というべきもののようには感じるが、あまり面白味がなかった。なんとなくバッドエンディングではない笑うセールスマンのような印象も持った。

■ストーリー

どっちが患者なのか? トンデモ精神科医伊良部の元を訪れた悩める者たちはその稚気に驚き、呆れ…。深夜のプールに忍び込みたいと思ったこと、ありませんか?水泳中毒、ケータイ中毒、ヘンなビョーキの人々を描いた連作短篇集。

■感想
一つの短編に一人の患者。患者は現代人ならではの精神的な病をわずらっている。本作のポイントは患者本人がその病気に気づいていないことと、それを治すはずの医者が患者に気づかれないように、いつの間にか病気を治す方向に導いているということ。その手段が変な医者独特の変ったもので時には患者と共に病気の原因になるものにはまったりと、到底治療とは思えないやり方で患者を快方に向かわせている。

医者のキャラクターがデブで暑苦しくてマザコンでロリコンという
最悪のキャラクターなのに、患者が毎日医者に通うということも不思議だが、この不思議な医者が実は有能な医者なのかもしれないが、本作を読む限りではそのようなことは一切描かれていない。読者まかせでその能力の真髄は自分で感じてくださいと言われているような気がした。

患者の特殊な症状は多少大げさなところはあるが、もしかしたら現代人に気づかずに蔓延していることなのかもしれない。読み方によってはまるで現代人の生き方に対して警告を発しているようにもとれなくもない。しかし当の医者本人が一番現代人独特の病気にかかってそうなのでなんとも不自然でアンバランスな印象をうけた。そこが本作の変でしっくりこない原因で、逆に言うとそれが本作の一番のポイントなのかもしれない。

シリーズ化されたとして、それを進んで読みたいかというと微妙だ。暇だったら読むかもしれない。



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