銃を置け、戦争を終わらせよう 未踏の破局における思索 [ 高村薫 ]
評価:2.5
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■ヒトコト感想
高村薫がシリーズとしてエッセイを描く。これまでにも「時代へ、世界へ、理想へ 同時代クロニクル」「作家は時代の神経である」がそれぞれの時期のエッセイとして描かれていた。今回は2022年のエッセイとなっている。様々な政治的な不正や、元首相の殺害事件。統一教会の問題などについて語られている。
ロシアとウクライナの戦争で世界は混沌とした中で、賃金が上がらない日本ではどのように日々を過ごしていくのか。こうやって改めてエッセイでその年に起きた出来事を描かれると、かなり激動の年だというのがわかる。日本に住んでいると戦争はどこか遠い世界の話のような気がするが、物価高などで日常生活に影響があると、否が応でも感じてしまう。
■ストーリー
未踏の破局を凝視する作家が新たなヴィジョンを語る、現代の羅針盤。戦争の時代のリアルな平和論。
■感想
これまで2019から2020、2020から2021の時期に描かれた作者のエッセイを読んできた。コロナの出始めの緊急事態宣言や、オリンピックの問題などが語られていた。2021から2022としてはオリンピックが開催され、なんだかんだと開催が1年延びたが、国民としてはオリンピックを楽しんでいたような雰囲気すらある。
WBCもありなんだかんだとスポーツは、コロナなどで疲弊した人々の心に活気をもたらす効果がある。作者もこのあたりについては、全く否定していない。
元首相が殺害されたことについても描かれている。元首相に対しては否定的ではあったが、民主主義として許せないできごとだと語る。この件が、政治的な背景によるテロではなく、統一教会の問題に起因したということが大きな話題となった。
宗教二世問題は、昔から言われてきたことだが、この事件をきっかけに統一教会がカルトだという認識をもったことだろう。ロシアとウクライナの戦争が勃発し、世界的に大きな影響となる。正直、今の段階では慣れが発生しているのが恐ろしい。
前作まででは、どのような出来事であっても最悪の時代だと語っていることが印象的だった。常に時代が経つごとに最悪が更新されるのか?というような思いになった。結果論でしかないが、後で考えるとあの時代が良かったと思ったとしても、その時代の真っただ中では最悪の時代だと思っていたのだろう。
十年後には、2022年はいろいろとあったが、まだ今よりはマシだったという論調になりそうな気がする。日本に関して言えば賃金が上がらず、海外とのレートの格差が大きいというのが一番のインパクトだ。
時代の変化を後になって読むと気づくという感じか。