作家は時代の神経である コロナ禍のクロニクル2020→2021 [ 高村薫 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
高村薫がリアルタイムに世間の出来事を語る。時代的には2020年から2021年にかけての時期だ。まさにコロナ真っただ中であり、その中でGotoや様々な施策がなされた時期でもある。政権交代もあり、東京オリンピックが開催されるかの議論された時期でもある。話題にはことかかない。激動の時期を作者はどのように見たのか。
作者のスタンスとしては安部政権を徹底的に批判するスタンスだ。コロナ渦での対処の仕方にしても、何が正解かわからない時期であっても、今のやり方は間違っているという立ち位置だ。当時の混乱ぶりを思い出す。コロナ渦でのリモートワークが主流となり、まさに働き方が変わった激動の瞬間だ。自分の中では、かなり転機となった時期でもあるので作者に共感できる部分が多かった。
■ストーリー
それでも、ありうべき未来へ! コロナ時代に顕在化した政治的無責任、社会基盤の崩壊、人心の動揺…。「時代の神経」である作家の感応力が、深く見つめる。リアルでありながら、理想を手放さない稀有な思考。危機の時代の羅針盤。 【主な内容】 コロナと五輪 石炭火力依存社会 東日本大震災10年 命を守らない政権 見えない飢えと絶望 公共のための言葉 社会の営み自体の変革 無関心と紙一重の無力感 IT化立ち遅れ 戦争体験の風化 大失業時代 学術会議任命拒否 大阪市解体構想 原発再稼動 阪神淡路大震災26年 世代交代できない社会 遺骨と基地建設 ミャンマー国軍による虐殺 デジタル監視国家
【あとがきより】 ……ジャーナリストではない一作家にあるのは皮膚感覚だけである。時代の空気感などは、たまたま大都市圏に隣接しているために現代社会の暮らしの風景がほぼそろっているその生活圏で、この身体が日々ダイレクトに感じ取っているものである。すなわち新型コロナウイルスの漠とした恐怖も、マスクや消毒液の不足に伴う社会の殺伐も、長引く緊急事態宣言下の緊張と緩みも、一年延期となった東京オリンピック・パラリンピックへの関心の低さも、外国人技能実習生の暮らしの厳しさも、みなこの生活圏で感じ取り、そのつど時評というかたちで言葉にしたものなのである。
■感想
当時の混乱を思い出す。今読むと、あの時期なのかぁ、というような感想をもつ。コロナ渦となり世界は大混乱となる。とりわけ日本についてはオリンピックをひかえていたので、どのように対応するかが注目されていた。
自分的には当初はオリンピックを見るためにチケットを申し込んだりもしていたのだが…。結局は、延期となり最終的には無観客での開催となる。この時期ではまだ先が見えない。突然の全国的な休校についても、結局正しいことだったのかは誰も検証しない。なんだか当時の喧騒を思い出してしまった。
この時期では、何がコロナ渦の対応で正解なのかわからない状態だったのは確かだろう。人の動きを制限するのが正しいのか。経済とウィルスを抑え込む作業のどちらを優先するのか。緊急事態宣言なども発されたのだが、結果論として正しかったのだろうか。
自分は比較的、影響が少ない立場にいたので大きな波風なく過ごせていた。それでも家族に影響が出たのは間違いない。この時期の混乱を証明するように、作者の考え方も短期間で変わっている部分もある。
コロナやオリンピック意外の記述も多数ある。社会の殺伐とした雰囲気の中でも、日々を暮らす人々はいる。阪神大震災から26年。東日本大震災から10年。デジタル監視国家など、様々な問題がある。それらについては、今現在でも同じ問題が起きている。
その時、瞬間的に思うことと、年月を経て感じることはまた違ってくるのだろう。ただ、当時の熱量を思い出すことができるのは間違いない。3年も前の出来事だとは思えない、つい最近のことのように思えてしまった。
月日が経つのは早く感じてしまう。