墜落 


 2023.2.13      沖縄は低学歴、低収入の地域なのか? 【墜落】

                     
墜落 [ 真山仁 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
作者の作品に登場してくる神林記者や富永検事のシリーズなのだろう。「コラプティオ」という強烈な作品で活躍した神林。富永検事シリーズとしては「売国」「標的」がある。今回は沖縄の闇とアメリカに握られた最新鋭戦闘機の問題について語られている。特に印象的なのは、沖縄の貧困や問題についてだ。

本土とは異なる価値観。マジメにやることがダメという認識がある。学校でちゃんと勉強する者が虐げられる。13歳で子供を産んだりもする。なんだか沖縄のイメージが悪い意味で変わる作品だ。沖縄と米軍は切っても切れない関係だ。最新鋭戦闘機で事故が起きたとしても、その自己の真相を日本が知ることはない。重要な部分がブラックボックス化されているのは恐ろしすぎる。

■ストーリー
2022年6月金城華が夫の一を刺殺。DVに耐えかねた妻が夫を殺した単純な事件として解決するはずだったが、担当検事となった冨永真一は不審を感じ、みずから捜査に乗り出す。ほぼ時を同じくして糸満市で自衛隊の戦闘機の墜落事故が発生。民間人が死亡したことで、軍事基地が集中する沖縄では、 抗議デモが巻き起こる。それに加え、航空自衛隊きってのエースパイロットによる事故は、単なる操縦ミスとは考えられない。戦闘機に何らかの不備があったのではないかと疑念が湧くが……一見何の関係もない、二つの事件。だが、双方の担当となった冨永が捜査を進めていくと、そこには思いもかけない接点が浮かび上がる。

■感想
沖縄ではDVが当たり前。DVされたからといって、夫を刺し殺すなんてことはない。ということが語られるのが衝撃的だ。沖縄の実状は本作のような状況なのだろうか。13歳で妊娠したり、貧困が当たり前で生活苦で小学生が夜の店で働いていたり。

真面目に勉強することを恥じとするような雰囲気が沖縄にあるのは知っていた。沖縄は学力が低く平均収入も低いらしい。そんな環境では、何が起きるのかわからない。軍事基地に対するデモや戦闘機が墜落した際の強烈なインパクトのある報道など、すさまじい臨場感の作品だ。

序盤は神林が戦闘機墜落事故のスクープを手にする。このあたり、「コラプティオ」で感じた、新聞記者の強烈な仕事ぶりに圧倒されてしまう。事件に偶然居合わせた神林が、様々なスクープを得る。戦闘機墜落事故は、機体に問題があると考え、アメリカの軍人に取材したりもする。

富永検事との関係もそうだが、そこから、どのように変化していくのか。富永は戦闘機墜落事故と夫殺害事件について調査する。真実を追い求める、そして、衝撃体な真実に行き着いてしまう。

戦闘機墜落事故は、アメリカがその事故原因を最後までブラックボックス化している。パイロットのミスとしてかたずけ、いち早く戦闘機を現場に復帰させたい政府。様々な権力者たちが、自分の保身をふくめ考え行動する。

沖縄の県民感情と国を守るための感情、そしてアメリカとの安全保障の取り決め。様々な要素が複雑に絡み合う。政府の意向を無視し、パイロットの尊厳を守るために行動するOBがいる。神林はマスコミとしての力をフルに使い、世の中に訴えようとする。

DV夫殺害事件の真相と戦闘機墜落事件という二つの要素が絡み合う、盛沢山な物語だ。



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