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 2018.1.12      次期総理候補が週刊誌のターゲットに 【標的】

                     
標的 [ 真山 仁 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
次期総理として国民的人気の政治家・越村みやびがスキャンダルのターゲットとなる。「売国」の検事がアンタッチャブルな領域へと踏み込んでいく。流行りの文春砲をほうふつとさせる流れがあり、政治家の不正を週刊誌と検事が追いかける。政治家側の目線もあり、さらには、越村みやびの夫までもが、週刊誌のターゲットとなる。

強烈なのは、週刊誌の執念だ。検事やマスコミはひたすら駆け引きを繰り返し、まさか総理候補が逮捕されるなんてことはないと考える。それでも正義のために政治的な圧力に負けずに検事は動き出す。結末はまさに現代の政治世界をそのまま反映しているような流れだ。誰かひとりが犠牲となり、すべての罪を被る。まさに、ドロドロとした政治の世界だ。

■ストーリー
任期満了を迎える黛新太総理の後任候補に、48歳という若さと美貌で国民的人気を誇る、越村みやび厚労大臣が名乗りを上げた。日本初の女性総理誕生が、にわかに現実味を帯びはじめる。

そんな中、医療・福祉系投資会社JWFの元CEO片岡司郎が、収賄の疑いでみやびを告発したいと東京地検特捜部に接触する。JWFは越村が推進する社会福祉制度改革のパートナー的存在、楽田恭平の会社だ。特捜検事の冨永真一は片岡の事情聴取を行うことにした。裏には永田町の策謀が潜んでいた――。

■感想
次期総理大臣候補である越村みやびが、収賄の疑いで逮捕されようとしている。情報の成否を判断しつつ、その先にある正義へとたどり着くために検事は動き出す。政治的な圧力のすさまじさと、政治家の強烈に厚い面の皮。

東京地検特捜部としても、総理候補を訴えるためには確実に正しい情報で判断しなければならない。負けられない戦いというべきだろう。対して週刊誌は、特ダネを手に入れようとやっきになる。話題の次期総理候補が逮捕されようとしている特ダネを逃さないという迫力がある。

週刊文春の影響だろう。文春砲というのが、それなりにインパクトがあるので、本作でもその流れはある。越村みやびの汚職事件をどのように証拠を得て対応していくのか。みやびの夫の酒蔵経営が傾きかけていることが、みやびのアキレスけんとなる。社会福祉制度の改革について語る本作。

何が正しいのかはわからない。ただ、それぞれが自分の利益のために自分のことだけを考えて行動することになる。標的とされるとどのような守る力があったとしても、どうしようもない。さらに、その先には、全ての責任を他人のせいにして逃げ切ることしかない。

実在の事件を元にしているような流れがある。強烈なのは、やはり検事たちの事件にかける情熱と、週刊誌の記者のスクープへの勢いだ。たとえ世間を全て敵にしたとしても、真実を暴き出そうとする。強烈なのは、世間の政治家絡みの事件と同様に、ひとりの人物の死によりすべてがその人物の責任とされ闇に葬られるという部分だ。

みやびの夫である老舗酒蔵の社長は、まるですべてを見越していたかのように、ある行動にでる。政治家の秘書は、もしかしたら自分が遣える人物に対しては、死をもいとわないという思いがあるのだろうか。

総理候補をめぐるスキャンダラスな事件は強烈だ。



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