2016.2.10 主席秘書官は影の総理だ 【コラプティオ】
コラプティオ / 真山仁
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■ヒトコト感想
ジャーナリズムのあり方と、綺麗ごとを抜きにした政治家の考え方が強烈な印象を残す作品だ。特に、新聞記者である神林がスクープを手にするまでの臨場感あふれる展開はすさまじい。スクープを手に入れ、なおかつ日本全体を震撼させるような記事を書く。自己顕示欲であふれた男が、総理までも引きずり降ろそうとする。
一方、政府側にいる白石が、日本の政治に対して困惑を覚える。青臭い正義のみの理念を貫くのか、それとも必要悪として日本の利益のために総理を助けるのか。総理側の秘書官や補佐官たちの立ち位置や、それぞれの動きがすさまじく興味深い。主席秘書官というのは、影の総理といってもおかしくないほどの力をもっているのだと、まざまざと思い知らされる作品だ。
■ストーリー
震災後の日本に現れたカリスマ総理・宮藤隼人は、“禁断の原発政策”に日本復興を託すが、その矢先、一人の日本人がアフリカで殺される。事件の背景に広がる政権の闇を追いかける新聞記者と、宮藤を支える若き側近は、暗闘の末、最後に何を見るのか。謀略渦巻く政治の世界を白熱の筆致で描く真山文学の真骨頂!
■感想
記者・神林がスクープを手に入れることから始まる本作。政治の世界に入り込み、情報を収集し、スクープを手に入れる。情報が正しいかの裏どりや、関係者への取材方法など、新聞記者の動きの激しさというのが、すさまじい臨場感で描かれている。スクープをとるために新聞記者はどのような動きをするのか。
スクープ合戦の中で、ひとりの日本人がアフリカで殺される。そこから神林は政府、ひいては総理の周りの怪しげな動きに目を付けることになる。このひりつくような記者たちの動きは強烈なインパクトがある。
神林と同級生である白石は、総理の補佐官として政治の世界に入り込む。記者の激しさと政治の世界の不可解さが描かれている。総理の首席秘書官である田坂は、まさに影の総理といえるほどの存在感を放っている。
総理周辺の雑ごとを、あらゆる手段を使って処理する田坂。そして、それを身近で見る白石。総理が何かしらの不正を働いていると知りながら、必要悪としてすべてを飲み込むのか。それとも、青臭い正義をふりかざすのか。この白石の困惑が本作のメインかもしれない。
総理大臣が、国益のためにテロ国家を支援していたというスクープを嗅ぎつける神林。ここで白石と神林との強烈な駆け引きが始まる。情報を手に入れ総理を引きずりおろしたい神林、そして総理を守りたい白石。白石の正義と総理の正義とのギャップや、田坂の考えなど強烈な引きの強さがある。
ドロドロとした政治の世界と、熱いジャーナリストの世界。強烈なインパクトがあるのは間違いない。次から次に出てくる衝撃的真実に、次はどうなるのかと、ページをめくる手を止めることができない。
ジャーナリストと総理秘書官。立場は違えど仕事に対する熱量は同じだ。
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