2016.10.2 政治の中枢にスパイが入り込んだ国 【売国】
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■ヒトコト感想
検事の富永と宇宙開発を夢見る遥。それぞれの物語が描かれており、国益とは何かをテーマにふたつの物語が繋がることになる。富永が政治犯を起訴するため調査する過程で、実はより大きな問題へとぶち当たる。検事の仕組みと事件を成立するために必要な調査など、検事という仕事がまるで警察のように様々な調査の資質が必要なのだとわかる。
さらには、法治国家として検事には絶大な権力があることもわかる。国益に反する行動をとる者がいる。アメリカの言いなりとなり、日本の国益を損なう行動をとる。まるで実話のようなリアルさがある。日本の政治の中枢や重要人物が、実はアメリカのスパイだった。という衝撃的な流れの作品だ。
■ストーリー
特捜部に赴任した気鋭の検察官・冨永真一。宇宙開発の最前線に飛び込んだ若き女性研究者・八反田遥。ある汚職事件と友の失踪がつなぐ二人の運命。正義とは何か?国益とは何か?超弩級の謀略小説。
■感想
タイトルどおり日本をアメリカに売る人物が存在する。それを最終的に検事である富永が追い詰めるという流れなのだが…。序盤では富永の検事としての仕事ぶりが描かれ、遥の物語では日本が宇宙開発に遅れている原因などが語られている。
ふたつの物語はまったく繋がる様子はない。富永は大物政治家である橘を不正献金で起訴するために動き出す。はるかのパートは宇宙開発の研究を行うためには予算が必要だという現実を下っ端の視線から描いている。どちらも上層部の意向には逆らえない立場というのがはっきりとしている。
上から言われた通りの動きをしていたふたりだが、次第に自分の意志で動き始める。富永は親友の残した秘密資料から、とんでもない事件に巻き込まれていく。遥は父親が発明した燃料が、何者かによってアメリカに売り払われたことにショックを受ける。
日本の国益を考えた時に必要なことは何なのか。宇宙開発には金がかかり予算をとることがプロジェクトマネージャーの一番の仕事になっていることを嘆く遥。富永と遥の物語が、国益をキーワードとして少しずつ繋がっていく感がある。
日本の中枢にはアメリカのスパイとして活動していた者たちが大量にいた。過去の日米安保の時代から、現代の原発事業まで、官房長官レベルの人物までもがアメリカの手先となり、国益を損なうような行動をとり続けていたということだ。
政治の中枢にまで入り込んだ巨悪を告発するのは危険がつきものだ。富永が正義を貫こうとすると、そこに様々な妨害が発生する。この世は権力を持つ者たちが好き放題できる世界なのだろうか。国益を守ることを考えた政治家や検事たちの戦いが激しく描かれている。
日本の政治の中枢にアメリカのスパイが入り込んでいるという流れは恐ろしすぎる。
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