ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-


 2019.11.14      印象的な透明人間のアニメ【ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-】

                     
ちいさな英雄ーカニとタマゴと透明人間ー
評価:3

■ヒトコト感想
短編のアニメが3作品詰まっている。どれも個性がある。カニを擬人化した作品やたまごアレルギーの子どもの物語、そして透明人間の物語。最も印象的なのは透明人間だ。その絵柄が昨今のアニメとは一線を画した絵柄でありながら魅力にあふれている。透明人間はマントとマスクとサングラスでその存在がわかるのだが、どうやら体も軽いようだ。

消火器を常に持っていないと体が浮き上がってしまう。最初は概念的な話での透明人間かと思いきや、本当の透明人間らしい。それぞれの短編は、主人公が何か心に一本芯が通っているようで良い。ピンチに陥ろうとも諦めることはない。必死な形相の主人公たちを見ると、観衆は思わず手に汗を握ってしまう。短いだけにシンプルな良さがある。

■ストーリー
「カニーニとカニーノ」生まれたら大冒険。虹色のトンボが舞う川底に、サワガニの家族が暮らしていた。父トトと兄カニーニ、そして、甘えん坊の弟カニーノ。巨大な魚たちから隠れてひっそりと暮らす3匹を、ある日、大嵐が襲う。間一髪でトトに助けられたカニーノ。しかし、巨大な泡の塊は、身代わりにトトを飲み込み、連れ去ってしまう。カニーニとカニーノは涙をぬぐい、父を探して生まれて初めての旅に出るがー。人間のすぐ傍らにある世界で、家族を守ろうとした、ちいさなカニの兄弟の大冒険が今、はじまる。

「サムライエッグ」いのちは、負けへん。東京・府中に暮らす少年シュンは、野球好きで元気な小学生。ダンススクールで働く母は、そんなシュンを温かく見守りながら育てている。しかし、シュンにはひとつだけ友だちと違うことがあった。彼は生まれた時から極度のたまごアレルギーに悩まされていた。ある日、野球の練習から帰ったシュンは、母の留守中に誤ってたまご入りのアイスクリームを口にしてしまう。突如、シュンの体に異変が起きる。そのとき、シュンがとった行動とはー。実話をもとに描く母と少年の愛と感動の人間ドラマ。

「透明人間」ぼくのことが、見えるんですか。古ぼけたアパートに暮らす、ひとりの青年。ワイシャツを着て、歯をみがき、いつものとおりに家を出る。しかし、何かが違った。彼は透明人間だった!だれも彼のことが見えない。コンビニの自動ドアも、ATMすら彼を認識しない。 透明人間がついに重力からも見放され、次第に空高く舞い上がっていく。このままだと消えてしまう、いのちもー。都会の隅に生きる見えない男のたった一人の闘いを、スペクタクルアクションで魅せる究極の野心作。

■感想
「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の監督が「カニーニとカニーノ」を監督したらしい。見るからに絵柄がジブリ風だ。そこからカニを擬人化した者が主人公となる物語が描かれている。本作を見ると、なんてカニには敵が多いのだろうと思わずにはいられない。

どこか「崖の上のポニョ」の要素もあるような気がした。ジブリを離れたとしても、ジブリの雰囲気を隠すことはできないのだろう。短編なのでサラリと終わってしまうが、カニの家族の幸せな家族団らんを見るとほっこりする。

「サムライエッグ」は、たまごアレルギーがこれほどまでとは知らなかった。作品の絵柄については賛否両論あるだろう。ぼんやりとした水彩画のようなタッチなので、あたたかな感じはする。内容的には子どもと母親の奮闘が描かれている。

たまごアレルギーでも重症な方で、少しでもたまご関連が体に入るととたんに命の危機が訪れる。夏祭りで誰かが手に持ったお好み焼きのマヨネーズが少し顔に着いただけで、途端に反応してしまう。作品よりもそんなに強烈なのか?というたまごアレルギーの方に目が行ってしまった。

「透明人間」は最も印象深い作品だ。最初は観念的な透明人間の話かと思った。誰からも相手にされない寂しい男をビジュアル的に表現しているのか。それが、本当に透明らしく、コートにマフラーサングラスでなんとか体が見える状態となっている。どうやら透明人間は体重もないらしい。

重いものを持っていないと体が浮き上がってしまう。それら設定の面白さもあるが、何より絵が魅力的だ。緻密に描かれているが、どこかルパンのような雰囲気すらある。この監督の別の作品を見てみたいと思った。

「透明人間」の絵は印象的だ。



おしらせ

感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp