神はいつ問われるのか? 


 2020.8.24      人工知能が亡命する世界 【神はいつ問われるのか?】

                     
神はいつ問われるのか? When Will God be Question
評価:3
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■ヒトコト感想
ウォーカロンシリーズ。今回は仮想空間での物語となっている。ヴァーチャル依存となった社会では、仮想空間がシャットダウンされると、その影響は果てしなくでかい。仮想空間を仕切る人工知能との対話のためにグアトは仮想空間に入り込むことになる。

未来の世界では極度に進化した仮装空間に依存している人が多いのだろう。さらには、仮想空間が発展しすぎて、現実との境目がわからなくなる危険性がある。グアトは人工知能が亡命することを助ける。ネットワークで世界中繋がっているとはいっても、人工知能の亡命という概念が新しい。仮想空間に依存した人々の苦しみが社会問題となる。現代でもネット上の空間に依存している人も多いのだろうが、それが進化した形だ。

■ストーリー
アリス・ワールドという仮想空間で起きた突然のシステムダウン。ヴァーチャルに依存する利用者たちは、強制ログアウト後、自殺を図ったり、躰に不調を訴えたりと、社会問題に発展する。仮想空間を司る人工知能との対話者として選ばれたグアトは、パートナのロジと共に仮想空間へ赴く。そこで彼らを待っていたのは、熊のぬいぐるみを手にしたアリスという名の少女だった。

■感想
仮想空間をテーマとした映画作品としては「アバター」などがある。現実の世界よりもすばらしい仮想世界があったら、人は仮想空間依存となってしまうだろう。人工知能により制御された仮想空間。もし、そんな仮想空間がシャットダウンされたとしたら…。

依存していた人々は悩み苦しむことになる。仮想空間に入れないとわかり、現実世界に絶望した人々は自殺を選択する。とんでもない状況ではあるが、もしかしたらそう遠くない未来に、本作のように仮装空間依存の人々は増えていくのだろう。

シャットダウンされたアリスワールドに入り込み、人工知能のアリスと対話しようとするグアト。人工知能が仮想空間を制御し、その人工知能と対話するというのが異質だ。人工知能は亡命するためにグアトに助けを求める。ネットワークで全世界が繋がっている未来であっても、人工知能の亡命というのは異様だ。

メモリに情報を記録し、メモリが刺さった基盤ごとスイスに持ち込んで亡命しようとする。結局のところ、どこまでもネットワークでつながっていても、最後には物理的な移動が必要なのだろう。

グアトがミッションを実行するにあたり、もしかしたら全てがヴァーチャルの世界ではないか?と疑問に感じていた。これは結局のところ、仮想空間が進化しすぎて、現実と仮想空間の区別がつかなくなったということなのだろう。

自分が必死に基盤を取り出し運搬しようとした行動の数々は、すべて仮想空間の出来事ではないのか?恐ろしいのは、現実と思っていたことが仮想空間であり、仮想空間と思っていたことが現実という入れ替わりの感覚だろう。

確実に起こりそうな未来の出来事だ。



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