青白く輝く月を見たか?  


 2018.1.14      人間は人工知能に勝てない 【青白く輝く月を見たか?】

                     
青白く輝く月を見たか? Did the Moon Shed a Pale Light? [ 森 博嗣 ]
評価:3.5
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■ヒトコト感想
ウォーカロンシリーズ。徹底して人間とウォーカロンの差や、人工知能と人間の違いを描いている本作。今回は、はるか昔に海底に沈んだ原子力潜水艦の内部で成長し続ける人工知能オーロラとの接触を描いている。原潜には核ミサイルが搭載され、オーロラはネット上の情報を収集し続けて成長し続けている。

現在のコンピュータでオーロラの動きをシミュレートしたとしても、それはオーロラ自身がすでにシミュレートしていること。オーロラを危険な存在と認識し攻撃するのか、それともオーロラと対話をするのか。人間にしかできないこと、ということでマガタ博士から依頼を受けるハギリ。人工知能と人間の接触を描いた、まさに近未来に起こりそうな物語だ。

■ストーリー
オーロラ。北極基地に設置され、基地の閉鎖後、忘れさられたスーパ・コンピュータ。彼女は海底五千メートルで稼働し続けた。データを集積し、思考を重ね、そしていまジレンマに陥っていた。放置しておけば暴走の可能性もあるとして、オーロラの停止を依頼されるハギリだが、オーロラとは接触することも出来ない。孤独な人工知能が描く夢とは。知性が涵養する萌芽の物語。

■感想
人工知能が暴走し人間に危害を加える、なんてことは映画などでよく使われる題材だ。本作ではその人工知能が無限にエネルギーを得ることができる原潜に搭載され、海底深くにたたずみ、さらには核ミサイルを搭載している。成長し続けるオーロラがいつ核ミサイルを人間に向かって発射するのか。恐怖を覚えた人間たちは、どうにかしてオーロラを停止させようとするのだが…。

オーロラがすぐれた人工知能のため、オーロラを停止させようとコンピュータで計算しても、それはオーロラがすべてシミュレートしていることであるため、成功する確率は低い。このあたりはまさに八方ふさがり感がある。

オーロラに対抗するためにはコンピュータを使ってはならない。その結果、天才マガタ博士はハギリに依頼することになる。このシリーズの特徴として、人間とコンピュータの違いを常に描いていた。計算力では人間はコンピュータには敵わない。

ただ、発想力に関しては人間はコンピュータに勝てる。そんな考えをもつハギリが、オーロラと接触するために提案した案とは…。オーロラと共に探索船が近くにいたことが大きなポイントとなる。大昔に沈没したと思われた探索船。その中の乗組員の状態は…。

人工知能の暴走に恐怖する人間たち。ただ、本作の人工知能たちは、人間の考えを凌駕する遥先にすすんだ考えをもっている。ハギリの考え方に共感する者もいれば、反発する者もいる。ウォーカロンが人間になりたいのか?という問いと同様に、人工知能は人間に近づきたいのか。

今世間で騒がれている人工知能論争も、将来どうなるのかわからない。ただ、人工知能が人間を滅ぼそうとした場合は、人間は太刀打ちできないだろう。オーロラの考え方が全ての人工知能に当てはまるわけではないだろう。

近未来の恐ろしい状況を想像してしまった。



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