氷獄 


 2020.5.11      バチスタシリーズのファンサービス 【氷獄】

                     
氷獄 [ 海堂 尊 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
バチスタシリーズを読んでいないと辛いだろう。本作の短編ではシリーズの長編の内容がところどころに登場してくる。登場キャラクターについても、そのバックグラウンドを知らないと物語として楽しめない可能性が高い。作中に登場してくるキーワードについても、他の作品を読んでいないと意味がわからないだろう。

特に表題作でもある「氷獄」では、元の事件について少しは触れられているが、それ以外の事件についてほとんど関連性なく進められている。シリーズのファンにとっては、過去作品で登場したキャラクターのその後が読めるような気持ちで楽しいのかもしれない。厳しい試練を乗り越えた患者がどうなったかなど、後日談的流れがあるのは良いのかもしれない。

■ストーリー
「私が絞首台に吊されるその時、日本の正義は亡びるのです」。新人弁護士・日高正義が初めて担当する事件は、2年前、手術室での連続殺人として世を震撼させた「バチスタ・スキャンダル」だった。被疑者の黙秘に苦戦し、死刑に追い込めない検察。弁護をも拒み続ける被疑者に日高正義は、ある提案を持ち掛けた。こうして2人は、被疑者の死刑と引き換えに、それぞれの戦いを開始する―。(「氷獄」)『チーム・バチスタの栄光』のその後を描いた表題作を含む、全4篇。待望のシリーズ最新作。田口・白鳥も登場!

■感想
「星宿」は十字星を見たいと希望する少年の望みをかなえるために翔子が奔走する物語だ。シリーズを読んでいないと辛い。本作の前にどのような出来事があったのか。「ジェネラルルージュ」を読んでいないと楽しめないだろう。

病院内部では無理難題が発生した場合にはどうするのか。便利屋の神林を呼び出してうまく利用するのだが…。眼球を摘出する手術を行う少年に対して、人はどのような言葉をかければよいのだろうか。絶望感しかないはずだが、前向きになれる作品かもしれない。

「黎明」は、「螺鈿迷宮」を読んでいないと辛いだろう。末期ガン患者の終末医療をあつかう短編だ。ホスピスでは治る希望をもってはならない。死を受け入れるしかない。ただ、作中では自分で治療のために薬を飲むことすら許されない。

なんのためにそこまでする必要があるのか。末期ガン患者たちが自分たちのことを自分たちで世話をし、やりがいを生み出していた螺鈿迷宮の流れと逆をいくような作品となっている。その他、海堂尊作品の総集編のように様々な作品のキャラが登場してくる。

「氷獄」は「チームバチスタ」での真犯人の裁判について描かれている。すでに解決した事件ではあるが、氷室は弁護を拒否しつづけているが、そこに新人弁護士の日高が弁護を担当しようとする。日高は田口や白鳥と連携しながら裁判を滞りなくすすめるための策略を練る。

まさにシリーズのキャラクターが大集合といった感じだ。刑事や検察側もおなじみのメンバーが登場し駆け引きをする。彦根までも白鳥について苦言を呈したりもする。あらゆるキャラクターのバックグラウンドを理解していないと辛いだろう。

バチスタシリーズのファンならば楽しめるだろう。



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