冬の保安官 


 2020.4.28      大沢在昌作品の外伝的短編集 【冬の保安官】

                     
冬の保安官 / 大沢 在昌
評価:2.5
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■ヒトコト感想
大沢在昌の短編集。いろいろなシリーズの短編が詰め込まれている。ファンならば外せない作品だろう。いかにもハードボイルドな作品から、近未来の地球ではない地域のハードボイルドまで、多種多様で大沢在昌らしいハードボイルド短編が詰まっている。特にローズの物語は強烈だ。

地球ではないどこかでハードボイルド満載のローズが危険な任務を実行する。舞台が地球ではないだけで、ずいぶんと雰囲気は変わるが、ハードボイルドのキャラは変わらない。寡黙で多くは語らない。ワルからも一目置かれるような存在であり、どんな巨大な権力者に対してもひるむことはない。ハードボイルド好きにはたまらない流れかもしれない。

■ストーリー
シーズンオフの別荘地。見回り中の保安管理人は、無人のはずの別荘で、少女に銃口を突きつけられた。恋人を待っているという少女と、自らの過去を思い出しながら交流するのも束の間、彼女を追う男達が現われる(表題作)。誘拐事件の“メッセンジャー”を務めることになった「私」は、新宿で、背が高く、独特な目をした刑事に声をかけられ…。大沢作品の人気役者達が共演を果たす「再会の街角」を含む全9篇、極上の短編集。

■感想
「ジョーカーの選択」という短編は、あのジョーカーシリーズの原点ともいえる内容かもしれない。シリーズのジョーカーが二代目ならば、本作に登場してくるのは初代だ。ある意味外伝的な作品かもしれない。いつものジョーカーの流れを踏襲している。

絡んでくる相手に名前を聞かれると「ジョーカーだ」と答え、相手からふざけるな!と叫ばれる。ジョーカーに依頼をするバーの存在や、バーのマスタマスターまで、ジョーカーシリーズのファンならば間違いなく楽しめる作品だろう。

多数の人気作品の短編が収録されている。「再会の街角」は街角シリーズだ。ハードボイルドはもちろんのこと、ちょっとSFが入ったローズの短編もよい。ハードボイルドのイメージを保ちつつも、そこからさらに読者を飽きさせないような変化を加えている。

地球ではない場所でもハードボイルドは成立する。リガラルウの夢は、その設定からして特殊だ。希少生物であるリカラルウの求愛行動により人間は夢を見ることができ、そこでは自分が望んだ人と出会うことができる。

望みの人と夢の中で出会うために大金持ちが大金を出してその権利を買おうとする。当然ながら、その権利を抽選で手に入れた者にはあらゆる手段を使って売ってくれとアクセスしてくる者たちがいる。頑なにそれを拒否し続けると、今度は命を狙われることになる。

となるとボディーガード代わりにローズが活躍することになる。権利を得た女は、どれだけ大金を積まれたとしても、別れた父親の姿をひとめ見たいと権利を売ることをしない。金持ちは何億でも払うというが…。それほど価値のある権利なのだろう。

大沢在昌ファンならば読んでおくべき作品だろう。



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