亡命者 ザ・ジョーカー 


 2020.3.8      二代目ジョーカーの奮闘 【亡命者 ザ・ジョーカー】

                     
亡命者 ザ・ジョーカー 講談社文庫/大沢在昌
評価:3
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■ヒトコト感想
二代目ジョーカーが活躍する連作短編集。初代ジョーカーから引き継いだ二代目なので、序盤の短編ではまだ甘い部分があり、ジョーカー自身がピンチにおちいる場面がある。それが、回を重ねていくことでジョーカー自身が経験をつみ、危険に直面することが少なくなっている。時事ネタを扱っている関係上、フセインだとかの名前が登場してくる。

ジョーカーは一匹オオカミだが、その評判は古いヤクザであれば恐怖におののくことになる。二代目ということでの甘さと、経験をつんだ上での逞しさが同時に楽しめる作品だろう。シリーズとしての個性は微妙だが、ジョーカーがたびたびピンチにおちいり、それを運でくぐり抜けているのがよい良い。

■ストーリー
着手金は百万、仕事は「殺し」以外のすべて。六本木裏とおり通りのバーを根城にしているジョーカーのもとに、白髪の英国人男性が訪れてきた。彼は、ジョーカーが先代を継ぎ二代目となった初仕事の依頼人だった。二十年の時を超え、新たなる依頼がもたらされる「ジョーカーの鉄則」他五話を収録したシリーズ第2作。

■感想
前作「ザ・ジョーカー」から引き続き物語は続いていく。ジョーカーとしては、先代から引き継いだ二代目が主人公となっている。二代目なので、序盤の短編では考えの甘さから敵対する組織に囚われたりもする。相手をサラリと痛めつけたはよいが、そこから相手の復讐までも考えていない。

相手のアキレスけんを切って動けなくさせたはよいが、相手は組織的に復讐にきたりもする。ジョーカーとしての甘さが序盤にあるのだが、それが経験をつんでいくことで、後半の短編では危なげなく依頼をこなしている。

表題作でもある「亡命者」は強烈だ。ジョーカーが相手をするのは裏の仕事ばかり。中国の公安から狙われていた革命の象徴となりえる女が15年の月日を経て日本にいることがわかる。女を追いかけてきた男。女を日本で匿っている男。中国の公安側だが、ひそかに女を見守っている男。

それぞれが女を目的として駆け引きを続ける。ジョーカーは依頼者と女を面会させるために、男を呼び出すのだが…。ここで三者が一同に顔を合わせてしまう。ジョーカーの圧倒的な判断力の速さが物語のポイントだろう。

ジョーカーへの依頼は六本木のバーで行われている。そこに無邪気にやってきた売れっ子俳優の男。キャバクラの女を好きになり、その父親である沢木を訪ねてきた。ジョーカーはいつの間にかおせっかいな役どころをやらされることになる。

キャバクラの女は資金を援助してくれる裏稼業の男がいる。ジョーカーたちは若い俳優が騙されてるだけと思っていたが…。実は女は俳優の将来のことを考え、あえて憎まれ役となり身を引いたということだ。ありきたりな流れかもしれないが、それなりに面白いことは間違いない。

残念ながらシリーズとしては続いていないようだ。



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