2017.5.17 中華皇帝と離婚した女 【天子蒙塵 第1巻】
天子蒙塵 第一巻 [ 浅田 次郎 ]
評価:3
浅田次郎おすすめランキング
■ヒトコト感想
「蒼穹の昴」から続く物語。「マンチュリアン・リポート」の続編的扱いなのだろう。紫禁城を追われた中華皇帝とその妻。史上初めて中華皇帝と離婚した文繍とその妹にインタビューする形で物語はスタートしている。張作霖が暗殺されてからあとの歴史。蒋介石やその他の歴史的人物の名前はわかるが、その当時の中華皇帝の名前は良く知らない。そして、離婚していたということも。
クーデターにより皇帝が追われる中、皇帝を見限るように離婚した女。周りの印象は良くないだろう。本作では、そこにどのようなドラマがあったかが描かれている。第1巻では、まだドラマチックな展開とはならないが、文繍は皇帝の第2婦人として、決して恵まれた状況ではなかったというのがわかった。
■ストーリー
1924年、クーデターにより紫禁城を追われた溥儀とその家族。生家に逃げ込むもさらなる危険が迫り、皇帝は極秘に脱出する。「宣統陛下におかせられましては、喫緊のご事情により東巷民交の日本大使館に避難あそばされました」ラストエンペラーの立場を利用しようとさまざまな思惑が渦巻くなか、日本の庇護下におかれ北京から天津へ。
梁文秀と春児はそれぞれに溥儀らを助けるが──。王朝再興を夢見る溥儀。イギリス亡命を望む正妃・婉容。そして側妃・文繍は「自由」を選んだ。史上初めて中華皇帝と離婚した文繍。その裏にはいかなるドラマがあったのか──。
■感想
この時代の中国について歴史的な印象はない。浅田次郎の作品を読んでいるからこそ、張作霖暗殺までは理解できている。クーデターにより中華皇帝が追われる。政治的な思惑から皇帝を助けようとする日本。
このシリーズでは日本は狡猾で、中国からしたら一番やっかいな相手という描かれ方をしている。日本のジャーナリストが中華皇帝と離婚した文繍にインタビューする形で物語は語られていく。歴史的事実の裏に隠れたドラマを浅田次郎が独自の視点で描いている。
一夫多妻制が当たり前の中国で、第2婦人である文繍が突然法律的な問題を訴え離婚する。その力が弱まり、下手をすると殺されかねない中華皇帝。その妻となると影響を受けないわけがない。何も事情を知らない外部の者からすると、権力を失った皇帝を捨てた悪女ということになるのだろう。
離婚に至るまでには様々な葛藤がある。第1婦人との軋轢や皇帝が男性機能が不能であり、器の大きさをはき違えた行動をとるなど、何かしら問題はある。中国内部だけでなく、皇帝を担ぎ上げようとする他の勢力との駆け引きもまた強烈だ。
イギリスに亡命を望む第1婦人。中国を世界の列強が狙う時代であるだけに、権力を失ったとはいえ、皇帝の価値はある。文繍の妹を巻き込んでの様々な騒動。第1巻では離婚までにどのような出来事があったのかが描かれている。
恐らく今後は中華皇帝の行く末が描かれるのだろう。すでに歴史的真実として決まった結末はあるのだが、作者は独自の見解でドラマチックに描いてくれることだろう。この時代の歴史を勉強する上では、間違いなく教科書を読むよりも勉強になるだろう。
クーデターにより中華皇帝が追い出された事実を初めて知った。
おしらせ
感想は下記メールアドレスへ
(*を@に変換)
pakusaou*yahoo.co.jp