ポーカー・フェース 


 2017.9.2      金に執着のない作者 【ポーカー・フェース】

                     
ポーカー・フェース (新潮文庫) [ 沢木耕太郎 ]
評価:3
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■ヒトコト感想
沢木耕太郎のエッセイ集。エッセイ集の場合は、作者がエッセイで取り上げるテーマに対して自分が興味があれば楽しめる。自分がまったく興味のない内容であると辛い。本作では半々といった感じだ。イギリスとアメリカでマリーとメアリーと発音が異なることから「ブラッディ・マリー」の起源を想像したり、独特なエッセイであることは間違いない。

映画に関するこだわりや、作者が出会った人たちであったりとピンポイントで興味深い部分はあるのだが、全体としては薄味な印象だ。もっと奇抜で尖がったエッセイを求めていたのは、作者の「深夜特急」のイメージをいまだに引きずっているからだろうか。相変わらず金に執着がないということは良く伝わってきた。

■ストーリー
「初体験」から書き起こし、靴磨きの老人と鮨屋の主人の手がもたらす感懐へと導かれる「男派と女派」、銀座の酒場のエピソードがやがてカクテルの逸話へと姿を変える「マリーとメアリー」…波から波へと移るように、小路をふっと曲がるように、意外な場所へと運ばれるめくるめく語りの芳醇に酔う13篇。『バーボン・ストリート』『チェーン・スモーキング』に続く傑作エッセイ集。

■感想
最近、作者の「波の音が消えるまで」を読んだのだが、それはバカラの話だった。案の定エッセイではバカラの話が登場してくる。博打と無縁の生活と思われた作者。金に執着のない生活をしているだけに、博打で金を稼ぐなんていう発想はないのかと思ってたが…。

単純にゲームとしてバカラの面白さにはまったらしい。なんでものめり込むタイプの作者だけに、バカラにもしっかりとのめり込んだのだろう。実体験をサラリと小説化してしまうのはすばらしいが、小説を読むと作者がバカラにはまったのだなぁとすぐに想定できた。

作者が出会う人は相変わらず大物ぞろいだ。有名な女優だったり、スポーツ選手だったり。インタビューするということで会う場合もあれば、知り合いのつてで出会う場合もある。普通ならばそこでミーハーな部分がでてくると思うのだが…。

作者の平常心というか常に平常運転な心理状態がすばらしい。毎日家から仕事場まで歩いて40分。自由気ままな職業かもしれないが、安定がないことへの不安は一切描かれていない。作者のエッセイを読んでいると、なんだか悟りを開いた人物のように思えてしまう。

過去のエッセイを読むと、村上春樹に否定的な描き方をしていたのだが、本作では村上春樹の人気にあやかろうとしたのか、結構な頻度で村上春樹風な描き方をしている。日々のちょっとしたエピソードの話もあれば、アメリカ銃社会についての重い話まで多種多様だ。

どれだけ作者が取り上げたテーマに興味がもてるか。昔のような尖がった雰囲気はない。エッセイとしての切れ味もどこかなまっているような印象すらある。エッセイ内に毒があったり、誰かを悪く言うということが一切ないのが、薄味に感じる理由なのだろうか。

あまり印象に残らないエッセイ集だ。



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