深夜特急1 


2007.4.30 バックパッカーのバイブル 【深夜特急1】

                     

評価:3

■ヒトコト感想
バックパッカーのバイブル。猿岩石の旅の元ネタとも言われた本作。確かに読むとわくわくし、貧乏旅行に対する憧れのようなものがわいてくる。しかし、心のそこから熱くなるようなことはない。何か激しい事件があるわけでもなく、旅をする明確な理由もない。それらがどうも煮え切らないように感じさせる原因なのだろうか。香港での雑踏にまみれた生活風景や街の熱気はしっかりと感じとることができる。しかしもっとも印象に残っているのは旅ではなくサイコロ賭博そのものだ。ひりつくようなディーラーとのかけひき。よくある博打物と言われればそれまでだが、印象に残っているからしょうがない。

■ストーリー

インドのデリーからイギリスのロンドンまで、乗合いバスで行く―。ある日そう思い立った26歳の〈私〉は、仕事をすべて投げ出して旅に出た。途中立ち寄った香港では、街の熱気に酔い痴れて、思わぬ長居をしてしまう。マカオでは、「大小」というサイコロ博奕に魅せられ、あわや…。1年以上にわたるユーラシア放浪が、今始まった。いざ、遠路2万キロ彼方のロンドンへ。

■感想
ユーラシア大陸放浪の序章ともいうべき作品。これほど無謀とも思える旅をする理由がない。もちろん大した目的もない。絶対にこれだけはやり遂げるという強い決意のようなものもない。終始ゆるいペースで旅はスタートするはずだが、文章から伝わる印象はとてもそんなゆるさを感じることはない。目的がないのは主役の心内だけで、そこで生活している人々は日々を生きるのに必死だ。作品からは現地の人々の必死に生きる姿や、ちょっとでも気を抜けば身包み剥がされるような雰囲気をかすかに感じ取ることができる。

旅の途中に何か大きな苦難や出来事が起きるわけではない。明らかなフィクションでない限り、そうドラマチックな展開は起きないだろう。そう考えると異国の地で現地住民と同じレベルの生活をし、その国を身近に感じるということは十分に理解できる。香港やマカオ。日本とくらべると、どうしても雑多な感想は否めない。

そんな旅の中での出会いと別れが事細かに描かれてはいるが、結局最後まで印象に残っているのはマカオでのサイコロ賭博のシーンだった。騙し騙されの化かし合いはジゴクラクで十分に堪能できたのだが、本作の雰囲気もまたよかった。ジゴクラクが賭博のプロだとしたら、本作は素人が何の気なしにふらりと立ち寄った異国の地での賭博なので意味合いは
大きく変わってくる。今後の旅の資金に大きく影響するので多少の緊張感はあるが、なくなったら日本に帰ればいいという思いが若干緊迫感を薄れさせている。その場では本当にそう思ったのだろうが。

いまだ序章であり、旅の醍醐味というのを前面に押し出してはいない。おそらく今後国を経ていくにつれて、何か独特の雰囲気がでてくるのだろう。

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