2017.8.7 ファンならば全作品読むべき? 【村上春樹翻訳(ほとんど)全仕事】
村上春樹翻訳(ほとんど)全仕事 [ 村上春樹 ]
評価:2
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■ヒトコト感想
村上春樹の翻訳はいくつか読んでいる。本作では作者が翻訳したほぼ全作品が、作者の解説つきで紹介されている。自分が読んだ作品の中で、翻訳とは意識せずに読んでいた作品もあった。村上春樹のオリジナルかと思いきや、実は翻訳だった。それほど作者の翻訳は、当然ながら作者の色がでている。
あの独特な村上春樹の文体で翻訳されている。となると、当然のことながら村上春樹の熱烈なファンならばすべての翻訳を読もうとするのだろう。翻訳を読んでみた印象としては、「本当の戦争の話をしよう」だとか「心臓を貫かれて」は面白いと感じた。作品紹介以外には、本職の翻訳家との対談があり、どのようなスタンスで翻訳するかが語られている。
■ストーリー
同時代作家を日本に紹介し、古典を訳し直す。音楽にまつわる文章を翻訳し、アンソロジーを編む。フィッツジェラルド、カーヴァー、カポーティ、サリンジャー、チャンドラー。小説、詩、ノンフィクション、絵本、訳詞集…。1981年刊行の『マイ・ロスト・シティー』を皮切りに、訳書の総数七十余点。小説執筆のかたわら、多大な時間を割いてきた訳業の全貌を明らかにする。
■感想
村上春樹が翻訳をしているというのは知っていた。小説家として売れっ子な存在でありながら翻訳をする。それは小説に疲れたら翻訳するというように、ほぼ趣味のような位置づけなのかもしれない。じっくりと楽しみながら翻訳し、それでお金がもらえるというのはうらやましいことだ。
驚いたのは、村上春樹が訳した文章を別の人がチェックするパターンがあるということだ。翻訳に対する考え方は様々あると思うが、そのあたり指摘されたことに対して、激しい議論になることはないのだろうか。作中では指摘されることが勉強になると語っている。
作者の翻訳作品の中で、村上春樹のオリジナルではないかと思うほど印象深い作品がある。それは「本当の戦争の話をしよう」だ。本作を読み、翻訳作品として紹介されているのを見て初めて気づいた。有名なフィッツジェラルドやカーヴァー作品ではないけれども強く印象に残っている。
村上春樹の独特な文体で描かれると、正直、どの作者の作品も村上春樹風に感じてしまうというのはある。そんな中でノンフィクションである「心臓を貫かれて」は、真に迫る迫力が伝わってくる良作だ。
村上春樹の翻訳の師匠というべき人物との対談もある。そこで、どのようなスタンスで翻訳を行うかが語られている。基本的には英語が原文の作品を翻訳するのだが、ノルウェー語で書かれた作品が英語に訳され、それを日本語に訳したことがあるようだ。これを重訳と言い、あまり好ましくないことらしい。
まぁ、普通に考えると一段翻訳が入れば原文の微妙なニュアンスは変わるだろう。さらに訳されると…。昔流行ったシドニィ・シェルダンの超訳なんてのは、もしかしたらかなり適当に訳していたのかもしれない。
村上春樹ファンならば、全翻訳作品を読むべき?
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