魔法の色をしっているか? 森博嗣


 2016.6.12      進歩しすぎた技術の危険性 【魔法の色を知っているか?】

                     
魔法の色を知っているか? [ 森博嗣 ]
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■ヒトコト感想
Wシリーズ第2弾。死なない人類に近づくにつれ、子供が産めない体となっていく人類。本作では、そんな世界の中で、外界から隔離された特別自治区では、いまだに子供が生まれている地区があり、そこを訪れるハギリと護衛のウグイたちの物語だ。作者のシリーズではおなじみのマガタ博士の名が登場し、そして、第1弾と同様にキーワードが重要な役割を果たす。

ウォーカロンと人とを見分ける技術をもつハギリの命を狙う者たち。これが世界の未来の姿だというのであれば、かなり暗い未来だ。作者の描くキャラクター独特の無機質な感じが、ウォーカロンの存在と相まって、人間の冷たさのように感じてしまう。子供を産めるのはウィルスに冒されているからだ、というのは新しい考え方だ。

■ストーリー

チベット、ナクチュ。外界から隔離された特別居住区。ハギリは「人工生体技術に関するシンポジウム」に出席するため、警護のウグイとアネバネと共にチベットを訪れ、その地では今も人間の子供が生まれていることを知る。生殖による人口増加が、限りなくゼロになった今、何故彼らは人を産むことができるのか?圧倒的な未来ヴィジョンに高揚する、知性が紡ぐ生命の物語。

■感想
人間が死なずに完璧に近づけば近づくほど、子孫を残す必要はない。となると子供を産めない体に人類が変化していくのは、自然の摂理からいって納得できる。人間と変わらないウォーカロンが存在する世界で、人間とウォーカロンを見分ける技術をもつハギリは、命を狙われることになる。

特殊な未来で、人類が滅亡する未来が予見できていながら、人は自分たちの利益のために人を殺そうとする。なんでも合理化された未来を表現するには、作者の登場キャラクターのように無駄を一切省くような会話がぴったりなのだろう。

チベットの秘境で、何者かに襲われるハギリ。未来の世界でも、作者のシリーズではおなじみのマガタ博士の名前は登場してくる。もはや神をも超えた存在にすら思えてくる。S&Mシリーズでは天才として描かれてはいるが、はるか未来の本作でもその名前は健在だ。

マガタ博士の肉体は滅びようとも、その思想はプログラムなどで生きているとういことなのだろうか。正体を見せることはないが、常に大きな影響力を示す存在。マガタ博士の存在なくして、本作は成立しないのだろう。

今後、このシリーズがどうなっていくのかわからない。ハギリは常に狙われる存在となり、狙う立場の者たちが様々に変化していくのだろう。未来を描いた形の本作。本当に人類の未来が本作のようになるのであれば、なんだか暗い気持ちになる。

あまりにも進歩しすぎた技術は結局のところ、大きな意味では人のためにはならないということだ。今のようにどこか物足りないと感じさせる人類が正しい形なのだろう。人間とウォーカロンの見分けがつかなくなると、それはつまり人類の滅亡のように思えてくる。

作者が想像する未来は、かなり特殊だが妙な現実感がある。



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