すべてがFになる 森博嗣


2005.10.2 理系的ウンチクテンコ盛り 【すべてがFになる】

                     
■ヒトコト感想
理系作家といわれている森博詞のデビュー作。僕自身が理系であり、本作に出てくる技術的なことや トリックにまつわるプログラミングの話しなどは、馴染みあることなので違和感なく物語に入り込めた。 様々なコンピュータ用語やプログラミングをトリックとして扱ったりするあたりで、 理系と言われるのだろうが、読んで特に突出した理系という印象は受けなかった。 なんとなくだが、独特で難解なウンチクを組み入れているあたりは京極夏彦に近い印象を受けた。

■ストーリー
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季(まがたしき)。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。 偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平(さいかわそうへい)と女子学生・西之園萌絵(にしのそのもえ)が、この不可思議な密室殺人に挑む。

■感想
犀川と萌絵という二人のキャラクターの良さが活かされている。 どちらも表面上は常識人のようなフリをしているが、どこか常人離れしたところがあり、 特に犀川の人間関係に対する考え方などはどこか京極作品の京極道に似通った印象を受けた。

本作は設定が突飛であり、ありえないようなシチュエーションであったりするのだが、 事件が起こり、物語が進んでいくうちにそれが当たり前のように情景にとけ込んで不自然さを感じさせなかった。 おそらく技術的に馴染みの無い人は、本作の中にでてくる様々なシステムの理解が難しく、 想像するのも大変なのだろう。その点に関しては技術的知識は持っているので物語に のめり込むのも早かった。

”すべてがFになる”というタイトルの意味合いもすぐに理解できたのだが、 一般の人がこれをすんなり受け入れられたかというと疑問だ。 一般受けを最初から狙っていないような作りなのだが、実際にはかなり売れている。 その秘密はキャラクターの魅力に他ならない

事件が起こる前の導入部での真賀田博士と萌絵のモニター越しでの会話と、 その後の犀川や萌絵の普段の生活を語っている場面だけで、本作品に興味をもってしまった。 トリックがどうとかいうよりもキャラクターとそれを取り巻く周りの環境が読んでいるものにとって 魅力的であれば、多少難解な作品でも読者には受け入れられるのだろう。 京極作品も同じようなものだ。

シリーズ物で、これから順番に読んでいく予定なのだが理系以外の作品も書いていくのかという興味と テンションがどこまで続いていくのかを気にしながら読んでいきたいと思う。



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