ケンカの流儀 佐藤優


 2016.12.26      トラブルから抜け出す方法 【ケンカの流儀】

                     

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■ヒトコト感想
トラブルに巻き込まれた際にうまく抜け出す方法?が描かれている。作者の「修羅場の極意」と同じパターンだ。修羅場の極意を読んでいるのならば、パターンが同じなのであまり目新しくは感じないだろう。本作では、小説から修羅場への対処の仕方が描かれている。そのため、元の小説を引用する箇所が多く、人によってはこのあたりを煩わしく感じてしまうだろう。

現実に起きた事件での分析は、作者の色が強くでている。「イスラム国」の日本人人質事件はまさに作者の分析力を発揮した解説となっている。最初からイスラム国側は、日本政府と交渉する気がなかった。非常に説得力のある説明となっていることは間違いない。ニュースを見ただけでは、そこまで感じることはできなかった。

■ストーリー
憎らしい相手との闘争に巻き込まれた時、どうすべきか?個人や組織レベルの「日常」から、国家レベルの「非日常」まで、各種の修羅場をサバイバルするための極意を伝授する。ヘーゲル、池田大作、プーチンら「修羅場の達人」や、著者自身の獄中経験から、究極のノウハウを学び取れ。

■感想
多数の修羅場をくぐりぬけてきた作者。すでにおなじみの展開ではあるが、鈴木宗男事件による小菅ヒルズ(拘置所)に500日に渡って拘留されたことがまず修羅場として語られている。ただ、このあたりは作者の他作品で繰り返し語られている部分なので、同じことの繰り返しでしかない。

作者ほど強烈な経験をする人はまあ、ほとんどいないだろう。本作では作者の実体験以外には、小説作品などから修羅場をくぐりぬける方法を抜き出している。まさか「吾輩は猫である」から修羅場を生き抜くノウハウを見つけてくるとは思わなかった。

小説作品から学ぶパートでは、ひたすら引用が続いている。そのため、小説をかなりの部分読まされているような感覚となる。一瞬、手抜きなのでは?と思ってしまう。普段から小説を読むときに、現実生活の参考になるからと読む人は少ないだろう。

多少こじつけのような印象は拭い去れない。やはり作者は古典から何かを学ぶよりも、リアルに起きている事件などから情勢を分析し、修羅場をくぐりぬける極意を語る方が性に合っているのではないだろうか。「イスラム国」による日本人誘拐事件では、非現実的な金額を要求されているという、説得力のある解説がされている。

佐藤優は過去に「創価学会と平和主義」を書いており、そこではフラットな視点で創価学会を分析している(と思われている)。が、本作だけを読むと、かなり佐藤優は創価学会に肩入れしていると思えてしまう。宗教的に優れているのかもしれないが、かなりベタボメしているので、その印象が強い。

日本の平和を考え、自衛隊の海外派兵についてのストッパー役となっている公明党。なんだか、創価学会の機関誌のようにすら思えてしまう。より修羅場に特化した内容かと思ったが、想定の範囲内だ。

佐藤優の本を読み慣れている人にとっては、目新しさはないだろう。



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