2016.5.16 そこはかとなく漂うバブル臭 【銀座探偵局】
銀座探偵局 [ 大沢在昌 ]
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■ヒトコト感想
「無病息災エージェント」的な探偵小説。キャラクターがどこか軽薄で、コンビで活動し片方は資産家で腕っぷしが強い。主人公が雑誌の編集長で、ホテルチェーンの御曹司であるムウに無理やり探偵稼業へ引き込まれるという感じだ。強引な流れでヤクザや宗教団体や海外の組織と闘う。むちゃくちゃな内容であることは間違いない。
さらには、ふたりが偶然知り合うことになる相手は、実は老舗のヤクザのトップであり、なにかと二人を助けたりする。都合よすぎる展開と、軽薄な流れはまさに「絶対安全エージェント」的な雰囲気がある。中身がないと言えばまさにそのとおりだ。サラリと読み終わることができる、というのがポイントかもしれないが、それだけかもしれない。
■ストーリー
シティマガジンの編集長の僕が私立探偵に!?旧友で銀座ビュウ・ホテル・チェーンの御曹司「ムウ」こと武藤俊に強引に持ちかけられたのだ。ホテルから失踪した女性客を捜してほしいという。平隠な日々は刺激的すぎる日々に取って代わった。命を狙われ、マフィアと闘い、銃弾をかいくぐり、あげくには…。
■感想
ホテルチェーンの御曹司であるムウに無理やり誘われ、銀座で探偵をすることになった僕。事件に巻き込まれマフィアに銃を向けられたり、宗教団体のごたごたに巻き込まれたり。災難は続くが事件はしっかりと解決している。中には死の危険を感じるような事件もある。
ムウが女性にモテるということで、女関連のゴタゴタもある。銀座という場所柄、若干バブルの雰囲気を感じることができる本作。ホテルチェーンの御曹司だけに乗る車も派手で、その車を使い激しいアクションを繰りひろげる。
探偵を生業としてはいるが、ミステリー的な面白さは皆無だ。事件についても不可解な出来事があるわけでもなく、密室トリックがあるわけでもない。基本はハードボイルド路線で、ムウたちがひたすらはげしく、そしてちょっと軽薄に事件を解決していく。
依頼人が女性であれば、そのあたりで二人で仲間割れしたかと思うと、二人で三日三晩乱交パーティーに参加したり。動きが派手なのでテレビ映えはするかもしれない。派手で中身がほとんどない典型の作品としての存在感は放っている。
ホテルから失踪した女性を探すことから始まり、マフィアや宗教団体、そして関西の巨大なヤクザや怪しげな密輸まで。極め付けは二人が困ると助けてくれる人物がいるということだ。ヤクザ側に顔がきく老婆。虎屋の羊かんひとつで助けてくれる存在。
都合の良すぎる部分もある。いきなり自分とよく似た人物が日本中のヤクザから狙われる存在で、なおかつその本人が記憶をなくしているなんてのは、かなりやりすぎだろう。ネタとしての面白さはあるのだが、シリアスなハードボイルドを期待した人にはショッキングな内容だろう。
そこはかとなくバブル臭がただよう作品だ。
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