無病息災エージェント 


 2014.7.21     お気軽エージェントが依頼者を守る 【無病息災エージェント】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

国際的なガードマン会社の日本支社長であるクリスが、要人警護に四苦八苦する物語だ。基本的にクリスがダメキャラで、女好きというのがポイントだろう。ガード対象者が多種多様で、様々な状況に、偶然の要素もありながらなんとか仕事をまっとうする。クリスは仕事好きではなく、アラスカに飛ばされるよりは日本の方がましということで仕事を頑張っているだけ。

このゆるい感じが、作品全体をユーモアあふれるものにしている。ハーフでハンサムで女の扱いもうまい。だけど、仕事には不真面目。キャラ的にはありがちだが、依頼者やカード対象者が個性豊かなので、それに引っ張られる感じで物語が変化している。さらりと軽い気持ちで読める短編集だ。

■ストーリー

世界各地に支社を持つ国際的なガードマン会社(V・G・S)の日本支社長のクリスは、日英の混血でハンサムな青年。ところが遊び好きで仕事大嫌い人間ときているから、美人秘書の慶子は気を抜いていられない。一兆ドルの頭脳を持つエレクトロニクスの権威、毛生え薬の秘密を抱えた薄ハゲの元C・I・A局員など、世界からやってくる要人をめぐって巻き起る騒動―。

■感想
「一兆ドルの頭脳」は、クリスのキャラが全開だ。ガード対象者が天才児であり、クリスの女好きが発揮できないことで、まず気分を害するクリス。お決まりどおり天才児は小生意気であり、クリスを翻弄する。クリスとその助手の関係を描きつつ、クリスがなぜこんな仕事をしているのかや、アラスカに飛ばされる危機についても細かく描かれている。

いやいやながら仕事をする。仕事にはオプションとして綺麗な女性や何かがないとやる気が起きない。単純な話なのだが、キャラ立ちしているため、引き込まれてしまう。

「十万本をとり返せ」は、画期的な毛生え薬を発明した科学者をガードする物語だ。画期的な毛生え薬で、CIAやKGBやその他民間のライバル企業から狙われる男。なぜかクリスはあらゆる組織に対して顔がきくため、絶妙な交渉で苦難を乗り切るかに思えたが…。

毛生え薬のために命を狙われるというのも酷な話だが、クリスは早々とあきらめてしまう。短編のためか、その場しのぎ的な結末が多い。本作も、その場はしのげたとしても、その後、永久的に逃げ続けるのかと、どうでもよいことを考えてしまった。

「もっとも危険なパースン」は、ガード対象者が超暴力的なプロレスラーというのがポイントだ。肉弾戦では恐らく誰にも負けない男をクリスはどのようにしてガードするのか。日本のヤクザに狙われたとしても、プロレスラーは負けることはない。

クリスの仕事の多種多様さを表現しているのだろう。印象深いが、特別な面白さはない。サラリと読めるだけに、軽く流してしまう可能性もある。全体として、30分のアニメにありがちな、お気軽ストーリーのようにも思えてしまう。

クリスのキャラと、特殊な依頼者の関係を楽しむ作品だ。



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