クール・キャンディ 若竹七海


 2015.4.14      中学生目線のシンプルさが良い 【クール・キャンディ】

                     
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■ヒトコト感想

葉崎市シリーズ。「ヴィラマグノリア~」や「古書店アゼリア~」と同じく葉崎市が舞台となる本作。前2作と違うのは、登場人物が限定られているということだ。今までは複数の登場人物たちの複雑な関係性と、素人探偵が活躍するコージーミステリーであったが、本作は雰囲気が違う。中学生の渚が、兄にふりかかる殺人犯の疑いをはらすという物語だ。

渚と兄と兄嫁そして兄嫁のストーカーと、メインのキャラは限られている。中学生の日常に突如として襲い掛かる殺人事件騒動。中学生の日常を描きつつ、葉崎市シリーズ好きならばうれしくなるような小ネタがある。兄の容疑をはらすために渚が奮闘する。中学生らしい奮闘具合が良い。そして、結末は今までの雰囲気からすると衝撃的な流れだ。

■ストーリー

「兄貴は無実だ。あたしが証明してやる!」誕生日と夏休みの初日を明日に控え、胸弾ませていた中学生の渚。だが、愉しみは儚く消えた。ストーカーに襲われ重態だった兄嫁が他界し、さらに、同時刻にそのストーカーも変死したのだ。しかも、警察は動機充分の兄良輔を殺人犯として疑っている!はたして兄のアリバイは?渚は人生最悪のシーズンを乗り切れるか。

■感想
葉崎市シリーズ。兄の容疑をはらすため、妹の渚が奮闘する。終始、渚の一人称で展開される本作。中学生らしい日常の中で、突如として兄嫁の死を告げられる。それが渚の誕生日の前日ということが不幸の始まりとなる。イケメンの兄と空気の読めないお嬢様な兄嫁。

ストーキングされた兄嫁が自殺未遂を起こし、それがきっかけとなり兄嫁の死へと繋がる。渚の境遇は普通ではない。ただの本好きな中学生の日常に、突如として巻き起こる嵐。好奇心旺盛な中学生たちの話題となるのは当然のことだろう。

渚がお手伝いという名のアルバイトをするのは、葉崎シリーズではおなじみの古本屋だ。このあたりのキャラクターは、他作品を読んでいる人に対するサービスなのだろう。懐かしの面々が登場し、事件とは直接関係はないが、渚と会話をする。

同じ市で起きた別の事件というスタンスがよくわかる。渚目線で事件はすすんでいく。渚はあからさまに探偵的な行動はしない。日常の謎を解いた結果、いつの間にか兄の容疑を説くことへと繋がっていく。強烈なインパクトはないが、この自然な流れが良い。

複雑さを排除したシンプルな流れが良い。渚目線の物語のため、小難しい描写はなく、中学生らしいシンプルな思考が続いていく。だからといって、物足りないというわけではない。ラストにはちょっとした衝撃的な新事実が暴露されている。

渚が主役となり、殺人容疑をかけられたイケメンの兄は無実となる。兄嫁を自殺に追い込んだストーカーは悪者という刷り込みそのままのパターンが続くと思われたが…。シンプルな流れなだけに、余計なことを考えずにスラスラと読みすすめることができる。

前作までとテイストがかなり違うので、戸惑うかもしれない。



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