ヴィラ・マグノリアの殺人 若竹七海


 2015.2.4      個性的すぎるヴィラの住人たち 【ヴィラ・マグノリアの殺人】

                     


■ヒトコト感想

ヴィラ・マグノリアで謎の死体が発見される。まず、ヴィラの住人たちが個性的だ。やけに大人びた双子姉妹あり、他人とトラブルばかり起こす主婦、セレブ夫婦に古本屋や塾講師まで、様々な住人たちがそれぞれ秘密を抱えながら、物語はすすんでいく。限られた容疑者の中で、警察が事件を解決しようとすると、また新たな事件が発生する。

ヴィラの個性的な住人の中に犯人がいるのが定番だが、誰が犯人なのかわからない。住人同士での犯人推理が強烈に面白い。そして、お決まりどおり陰口の連続となる。住人たちの関係性が多少複雑で、誰と誰が仲が良くて誰が嫌われているのか最初はよくわからない。が、読んでいくうちに、自然と頭の中に人間関係を思い描くことができた。

■ストーリー

海に臨むヴィラ・マグノリア。その空き家になった一棟で、死体が発見された。ヴィラの住人は一癖ある人ばかりで、担当刑事達は聞き込み一つにてんてこ舞い。捜査に手間取るうちに、ヴィラの住人が殺される第二の事件が発生!二つの事件のつながりはどこに?住人達の素顔も次第に明らかになって―。

■感想
ヴィラの住人たちの曲者ぶりはすさまじい。特に他人に絡み、構ってもらい、自分の自尊心を満足させたがる主婦が非常にウザい。他人の家の駐車場に勝手に自転車を止め、車によって自転車が壊されたら弁償しろという。むちゃくちゃな要求を、さも当たり前のように繰り返すちょっとした痛い人だ。

そのほかには、湯水のように金を使いまくるセレブ妻や、おせっかいを焼かずにいられない老人など、ごく普通の御近所関係とは違う、特殊な人間関係がヴィラにはある。

不便なヴィラでの不明死体事件。陸の孤島というわけではないので、ヴィラの住人以外が関係している可能性もあるのだが、物語はヴィラ内部に犯人がいるということになる。鍵のトリックや、まったく身元不明の死体と関わりがありそうな人物を探す過程など、ミステリー的な面白さはある。

捜査途中に新たな殺人事件が起きると、ヴィラ内部犯説はがぜん強くなる。殺された人物と直前まで喧嘩をしていた住人や、前から良く思っていなかった住人など、容疑者は多い。が、実行可能な住人は絞られてくる。

本作の一番のポイントは、間違いなく双子の姉妹だ。子供ながらも事件の重要なカギとなる。重大な出来事を目撃していたとしても、聞かれなかったから、と答えない。生意気でどうしようもない子供たちであることは間違いないのだが、ヴィラの住人の中では良いアクセントとなっている。

事件のオチとしては思ったよりもシンプルだ。ヴィラの住人の秘密が間接的に事件解決へとつながっている。強烈なインパクトはないのだが、後に引く面白さはある。

ヴィラの住人たちの個性は秀逸だ。



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