ザ・万歩計 


 2014.12.20      作者のイメージが変わる 【ザ・万歩計】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

作者のエッセイは面白い。「ザ・万遊記」では、あるテーマに沿ったエッセイが描かれていた。本作は雑多なエッセイだが、作者の人となりがよくわかり、ファンにはたまらないだろう。印象的なのは、作者は学生時代、頻繁に海外へ貧乏旅行に行っていたということだ。

作家の印象はといえば、インドアで一年中部屋にこもってカリカリ文章を書いているというイメージだが、フットサルが趣味だったり、意外とアクティブなことに驚いた。貧乏旅行では、まるで「深夜特急」のように様々なアクシデントに出会う。小説作品からは感じない、作者のたくましさのようなものすら見えてくる。本作を読むことで、作者のイメージがだいぶ変わってきたのは確かだ。

■ストーリー

少年時代に大阪で阿呆の薫陶を受け、大学時代に自分探しの旅先で全財産を失い、はては作家目指して単身東京へ。ホルモーでついに無職を脱するも「御器齧り」に苛まれ、噛みまくるラジオに執筆を阻まれ、謎の名曲を夢想する日常は相変わらず。そのすべてを飄々と綴った初エッセイ集。

■感想
エッセイを読んで興味深いのは、やはりどのようにして作家になったかということだ。本作でもそのあたりがしっかりと描かれている。驚きなのは、小説家になるため勤めていた会社を親に内緒で勝手に辞め、東京に転勤になったと嘘をつき、東京へ引っ越すというところだ。

その勢いがすばらしい。さらには数年後にしっかりと結果をだすところもすばらしい。また、作者の両親も、息子のむちゃくちゃな行動を否定するのではなく、応援してしまう広い心がなんとも強烈だ。

作者の小説作品からは見えてこない部分がエッセイでは明らかとなる。それは、海外に貧乏旅行へ行くというアクティブな面だ。バックパックひとつで安い宿に泊まりあちこち旅をする。そこでは様々なアクシデントに遭遇する。

さながら旅エッセイのような雰囲気だが、メインは失敗談だ。小説家になる前の話なので、それがそのまま作品に影響しているとは思えない。が、作者の作品からは、特別アクティブな印象はない。それは、フットサルを趣味としていることも同様かもしれない。

鴨川ホルモー」という特殊な小説作品でデビューした作者。当然、その顛末も描かれている。ホルモーという、日本語には存在しない単語をタイトルにもってきたことの苦悩が面白おかしく描かれている。

無職時代におけるちょっとした屈辱的経験や、売れっ子作家となったあとでも、特別なセレブ感のない生活など、作者の人柄や雰囲気が伝わってくるエッセイもある。小説作品の元ネタとなった経験を、面白おかしく、恐らくはほぼすべて虚構なのだが、さも実際にあったことのように語る。

作者のことをよく知りたい人は読むべき作品だ。



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