女のいない男たち 


 2014.12.8      物分りが良すぎる男 【女のいない男たち】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

久しぶりの短編集。読むと作者の短編だとすぐにわかる、いつもの雰囲気に満たされている。特に「木野」は、最初は女のいない男たち、というくくりに入るような雰囲気だったが、後半からは作者の「海辺のカフカ」や「1Q84」的な、何かわからないが特殊な存在により守られていた(攻撃される)という話となる。

結局のところ結論はでないのだが、この雰囲気が好きな人にはたまらないだろう。男と女のドロドロとした関係はない。必ず男女の話となるのだが、そこは常にサラリとした関係で終わっている。人間味がないというか、人のいやらしさがない。言い換えれば物わかりが良すぎるといった感じかもしれない。

■ストーリー

絡み合い、響き合う6編の物語。「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」「女のいない男たち」村上春樹、9年ぶりの短編小説世界。

■感想
「ドライブ・マイ・カー」は、タバコをポイ捨てするのが当たり前と、実名の町で描かれたことが抗議された作品だ。本作では架空の町に直されたいたが、そこまで目くじらを立てることか?というのは読んだ感想だ。

運転手として雇った女性との関係を描いた作品だが、やはり女性に対しての執着というか、熱さを感じることはない。どこか、全体として冷めている。それも第三者的な冷めた目線で、自分のことを見ているような、そんな短編として強く印象に残った。

「シェラザード」は、男の淡々として感情描写に対して、女の熱さばかりが伝わってくる作品だ。ある男の元に定期的にやってくる人妻シェラザード。学生時代に恋した男子学生の家に空き巣に入り、学生のシャツや備品を盗んだことを思い出として語るのだが…。

女の性的な異常さを感じつつも、それを寝物語で聞く男の冷めた感想が強烈だ。女に対して男は、一時的に熱くなるにせよ、それが長時間持続することはない。礼儀正しく良い人すぎることが、どうにも違和感を覚えてしまう。

「木野」は、作者得意の不思議な世界だ。妻と離婚し、バーを始めた木野。そこで女と出会い一夜を共にするのだが…。喫茶店を改装しジャズバーを作った木野。小粋なジャズを流し、客が来なくても気にしない。猫が住み着き、常連のカミタという男がカウンターで本を読みながらウィスキーを飲む。

作者の世界観は相変わらずというか、この手の雰囲気が強い。そして、猫が居なくなったのを境として、カミタがバーの危機を告げる。目に見えない力を連想させる言葉の数々。いつもの作者の世界だ。

作者のファンならば、安心できる世界観だ。



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