海辺のカフカ 上 村上春樹


2006.5.11 不思議なミステリー? 【海辺のカフカ 上】

                     

■ヒトコト感想
哲学的というかミステリーというかSFというか、なんとも不思議な気持ちになる。基本は家出少年の話なのだが、平行して登場する不思議なナカタというおじいさんと何か繋がりがありそうで非常に興味深い。何かとんでもないことが起こっているようだが当人達はそのことにまったく気づいていない。普通の日常で普通の少年のようだが、特別な何かがあるのだろう。さまざまな伏線が下巻でどのように活かされるか非常に目が離せず、結末が楽しみだ。

■ストーリー

「君はこれから世界でいちばんタフな15歳の少年になる」―15歳の誕生日がやってきたとき、僕は家を出て遠くの知らない街に行き、小さな図書館の片隅で暮らすようになった。家を出るときに父の書斎から持ちだしたのは、現金だけじゃない。古いライター、折り畳み式のナイフ、ポケット・ライト、濃いスカイブルーのレヴォのサングラス。小さいころの姉と僕が二人並んでうつった写真…。

■感想
哲学的で心理的な話なのだろうか。冒頭登場するカラスという心の中の少年であったり、空から降ってくるアジやヒルであったりと、何か心理学的な暗示をしているようにも思える。家出少年である田村カフカは普通の少年のようだが、何かとんでもない秘密を持っているのかもしれない。それを示すような描写がいくつかあり普通の15歳の少年ではない何かがあるのだろう。その生い立ちから家族構成まで、ミステリーの素材としては申し分ない。

一方、ナカタという老人の話はその丁寧な話口調や行動から読んでいてほのぼのとしてくるが途中に登場する陰惨な場面や特殊な能力をたびたび発揮したりと、このあたりでSF的なものをものすごく感じることができた。

離れた場所で殺人が起こり、それが無意識下、つまり夢の中での行動なのか悩む登場人物達。哲学的な映画などでは複雑に入り組ませ見ている者を煙に巻き、結局はすべては夢でしたというオチにする場合があるが、本作はきっちりと筋道が立てられており、混乱することなく読み進められる。

家出少年である田村カフカののんびりとした図書館生活。それは非常にゆっくりとした時間の流れがあり、どこか憧れのような気分で読んでいた。しかしその生活には何か秘密があり運命的な何かがあるのだろう。そのすべてが明らかになる下巻は見逃せない。




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