2013.12.11 恐ろしい話が目白押し 【泣き童子】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
「おそろし」「あんじゅう」に続く三島屋シリーズ。「おそろし」がタイトルどおり恐ろしい話の目白押しだったことに比べ、「あんじゅう」は一転ほのぼのとした雰囲気だった。本作では、不思議な話を聞くというスタンスは変わらず、より短い恐怖が凝縮されたような話が多い。そして、恐ろしい現象に対して、おかちが必要以上に原因を調べたり、何か教訓めいたことを考えないのが良い。
不思議なことは不思議なこととして、そのまま腹の中におさめている。現代の恐怖話とは違う、江戸ならではの恐怖というのは、現代ならば”ありえない”ことでも、江戸時代ではありえるのでは?と思わせる筆力だ。短いが圧縮された恐怖を楽しめる作品だ。
■ストーリー
江戸は神田。叔父の三島屋へ行儀見習いとして身を寄せるおちかは、叔父の提案で百物語を聞き集めるが。人気時代小説、待望の第三巻。
■感想
「くりから御殿」は、恐ろしい。そこに理由がなく、恐怖の元凶がはっきりとしないので、なおさら恐ろしい。ある男が家を建て増しした。大工の棟梁が柱を逆さに立ててしまったと言い、建て直しさせてほしいと懇願されたが、男は断った。すると、建て増しした家で迷子になる者が続出した…。
障子を開くと、その先にまったく同じ部屋が永遠と続く。窓も飾りもなにもない殺風景な部屋が永遠と続く。想像しただけでも恐ろしい。和風の恐怖というか、なんというか。極めつけは、最後に扉があり、扉の先からは怪しげな声が聞こえてくる。恐ろしいことこの上ない。
「泣き童子」は、子供の泣き声を身近に聞くことが多い自分には、かなり恐ろしく感じた。ある子供は3歳にも関わらずまったく口をきかないが、突然、爆発したように泣き出すことがある。その泣き出す理由はある男がいる時だけだった…。
子供が大泣きする理由はなんなのか。そこに科学的理由がなくとも、子供には神秘の力があると思えるだけに、物語にも説得力がある。自分の姿を見ると子供が大泣きする。いなくなるとぱったりと泣きやむ。子供が泣く理由を知っていたとしたら、これほど辛いことはない。
「まぐる笛」は、即物的な恐ろしさがある。ある男がおかちの元に持ち込んだ奇妙な話。それは母親に特殊な力があるという話だった。山に怪物が現れ、それを母親の特殊能力で退治するという、単純な話なのだが、怪物の描写が恐ろしい。
山に突如現れる怪物の正体が人の恨みで形作られた怪物であり、それが村人たちを襲いはじめる。唯一退治できるのは…。女の特殊能力であり、それを身につけた女が幸せな暮らしを送れるかというと、微妙なのだろう。何が幸せなのか。怪物に頭からかぶりつかれて死ぬことか、それとも…。なんとも深い作品だ。
短いだけに、よけいな説明がなく、シンプルに恐ろしい。
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