2014.1.29 財政破綻した病院の末路 【極北ラプソディ】 HOME
評価:3
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■ヒトコト感想
作者の「極北クレイマー」「ジェネラルルージュの凱旋」「ブレイズメス1990」は読んでおくべきだろ。それぞれに登場したキャラクターたちが、それぞれの使命を受け本作で活躍する。特に世良と速水は本作での活躍を見越して前作を描いたのでは?と思うほど、その役割がしっかりとしている。財政破綻した病院の再建に奮闘する世良は、「ブレイズメス」での金に執着する天城の姿を見つつも、それをうまく消化している。
天城のその後の境遇を予測するような記載もあり、シリーズのファンとしては見逃せない要素が盛りだくさんだ。速水に関しても、あれほど熱望したドクターヘリを導入した結果どうなったのかが詳細に描かれている。速水のジェネラルっぷりが若干弱まったのは、頭を押さえる役割の人物がいるからなのだろう。
■ストーリー
財政破綻した極北市の市民病院。再建を図る新院長・世良は、人員削減や救急診療の委託を断行、非常勤医の今中に“将軍”速水が仕切る雪見市の救命救急センターへの出向を指示する。崩壊寸前の地域医療はドクターヘリで救えるか?医療格差を描く問題作。
■感想
極北市は財政破綻した夕張市をモデルにしているのだろう。市民病院の実状と、診療費を払わない患者にどう対処するのか。一概には言えず、作中の世良の対応が100点かというとそうは思わない。が、市民病院の問題点や、財政破たんした理由など納得せざるお得ないことばかりだ。
入院患者を転院させ、救急も受け入れなければ最小限のスタッフでやりくりできる。その結果、他の市町村に迷惑がかかるが、財政破たんした市が生き残る手段は少ない。世良の超合理的な考え方は、他人を黙らせる力がある。
「ジェネラル…」で雪見市へ飛ばされた速水がそこで念願のドクターヘリを手に入れる。将軍らしさを垣間見せるが、頭を押さえるべき人物の存在により、将軍らしさはうすれている。ドクターヘリとなると、一般人は万能のように考えるが、実はそうではないことが描かれている。
夜になれば出発できず、天候にも左右される。救急医療の実状と、ドクターヘリだけでは地域医療は完璧ではないという流れが描かれている。速水のかっこよさよりも、ドクターヘリのパイロットたちの寡黙な行動に心打たれてしまう。
作者の作品は、出版された順に読んでいくに限る。そのキャラクターが、そんな行動をするにはすべて理由がある。過去のエピソードを知らなければ、ただの特殊な考えを押し付ける奴というイメージしか持てないだろう。世良が金にこだわる理由。速水がドクターヘリと救急医療に力を入れる理由。
作者の主義主張がこれらのキャラクターによって代弁されているのは間違いない。ひとりの老人が年間に使う膨大な健康保険料。すべては国が払っていることで、いずれ崩壊するであろう仕組みに警告を鳴らしている。
他の作品を読まずとも楽しめるが、読んでいた方が断然楽しめるだろう。
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