極北クレイマー 上  


 2011.7.28  現実の事件を連想させる 【極北クレイマー 上】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

いつものシリーズだが、財政難で苦しむある都市の市民病院を舞台にし、おそらく下巻ではメインとなるであろう妊婦の医療事故についてあつかう本作。実在する都市を連想させ、医療事故の件は、医者が逮捕されかなり問題になった実在の事件を元ネタとしていることは明らかだ。このあたりは、作者の主張が色濃くでており、司法解剖についても、いつもの主張が繰り返されている。登場キャラクターがいつもよりもおとなし目であり、上巻ではこれといったインパクトのある出来事がないため、少し物足りなく感じるかもしれない。しかし、下巻はかなり期待がもてる。実際に裁判にもなった医療事故を、作者がどのようにあつかい、解決していくのか。恐らく医者の立場に立った意見なのだろうが、非常に興味深い。

■ストーリー

財政破綻にあえぐ極北市。赤字五ツ星の極北市民病院に赴任した非常勤外科医・今中は、あからさまに対立する院長と事務長、意欲のない病院職員、不衛生な病床にずさんなカルテ管理など、問題山積・曲者揃いの医療現場に愕然とする。そんななか謎の派遣女医・姫宮がやってきて―。

■感想
問題が山積みの市民病院へ赴任した今中。財政難の市民病院というのは、今の日本ではごくあたりまえなのだろう。そのせいで人手不足から不衛生な環境となり、常識を疑う医療現場にゾッとするという、いわば外部からきた者が、病院内を改革するというわかりやすい流れかと思った。本作は今中にはその力はなく、結局その役割をシリーズではおなじみの姫宮がやることになる。財政難に対する根本的な解決は何一つ示されず、下巻への伏線が数多く用意されている。実在する都市を連想させるだけに、病院の描写には驚かされずにはいられない。

下巻では妊婦の医療事故について描かれることだろう。実際に起こった事件で、医者が逮捕されるという事態にまでなっているだけに、作者がどのように描くのか気になるところだ。この事件いついては、作者のほかの作品でも触れられており、それなりに主張はわかっている。それが、上巻の流れでは一筋縄ではいかない、厚生労働省まで登場し、複雑な流れになりそうだ。はたしていつものメンバーが登場してくるのか。それとも、姫宮と今中だけで、事態はおさまるのか、気になる部分ではある。

本作のメインは下巻なのだろう。上巻では財政難の市民病院の現状と、いつ潰れてもおかしくないという印象付けをしている。それが妊婦の事故と共に、下巻でどのように解決されるのか。画期的な解決方法で、財政難に苦しむ公立病院を救うことができるのか。医療裁判の件は、なんとなく流れはわかるが、財政難は非常に解決困難だろう。実際に医療の現場に従事する作者だからこそ、現場の意見を吸い上げた答えがでてくるのだろう。期待感は否が応でも高まってくる。

すべての期待は下巻に集約されている。




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