ブレイズメス1990 


 2014.1.15   資産の半分を払ってでも受けたい手術 【ブレイズメス1990】  HOME

                     

評価:3

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■ヒトコト感想

ブラックぺアン1988」から続く物語。その後の物語として、今回も曲者医師が登場する。モナコに住み、世界中の金持ちたちが手術を求める心臓外科医。資産の半分を差し出すことで手術をする男、天城。前作が、超絶的な技術よりも、誰もが簡単に成功率の高い手術が行える機器が重要だという流れだった。本作はそれに反するように、天城の独り舞台となる。高階でさえも、天城の技術の前には黙るしかない。

医療技術的に過去の出来事を、作者なりにフィクションとして描いているのだろう。結末がどうなるかわからないが、世界でただひとりしか実行できない手術に意味があるのか。スムーズにすすむ天城の計画に、大きな障害が待ち受けているのでは?という予想に反して、あっさりと物語はすすんでいく。

■ストーリー

この世でただ一人しかできない心臓手術のために、モナコには世界中から患者が集ってくる。天才外科医の名前は天城雪彦。カジノの賭け金を治療費として取り立てる放埒な天城を日本に連れ帰るよう、佐伯教授は世良に極秘のミッションを言い渡す。

■感想
世界でただひとりしかできない手術。それを求めて世界中の金持ちたちがモナコに集まる。そんな天才心臓外科医である天城が、東城大学の面々と対決する。バチスタ前の出来事のため、バチスタの登場人物たちが、まだその個性をはっきする前の状態で登場する。

天城の個性にすべてが吹っ飛んでしまう物語のため、他の登場人物たちはあまりに印象にない。天才外科医が公開手術を開催し、そこで自分の技術をお披露目する。物語としてはここで何か大きなアクシデントでも起きるのかと思いきや…。物語はかなりあっさりとすすんでいく。

「ブラックペアン」のようなドラマチックさはない。その原因として、物語が天城の思惑通りにすすみすぎていることがある。恐らく続編で天城たちに何かしらの試練がおとずれるのだろう。本作単体で読むと、天城の天才的技術と世界の金持ちたちはどんなに金を払ってでも手術をしたいとい執念が描かれている。

資産の半分をなげうってでも延命したい。それは当然のことだが、人間心理としてなかなか莫大な資産の半分を捨てるなんてことはできない。

作中で天城は医者の価値を説いている。同じように手術を求める人が二人おり、物理的にどちらか一人しか手術ができない場合、どちらを選ぶか。金を多く払う方だと言う天城。高階やごく普通の医師たちは、倫理感から天城に反発する。天城の言葉は極論でしかない。

判官びいきの日本人にとっては、天城がどこかで失脚し高階が勝つことを望んでいるのかもしれない。ただ、天城が大口をたたきながら実力で相手を黙らせるそのスタンスというのは、ちょっとした悪のヒーローを見ている感じで心地良い。

続編が気になる流れであることは間違いない。



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