泣く大人  


 2012.4.13   心の安定を感じさせるエッセイ 【泣く大人】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

作者のエッセイ集はいくつか読んだことがある。わりと出版された順に読んでいるので、作者の変化がそのままエッセイの変化として読みとることができる。初期の「都の子」や「泣かない子供」などと比べると、やはり結婚したということが大きいのだろう。エッセイには作者の夫についてのことがあちこちに登場してくる。昔のような尖った印象はなりを潜め、作中でも作者が語っているように、安心して帰る場所があるのは、心の安定にも繋がるのだろう。”結婚している”ということが、非常に重要なのだと思い知らされた。エッセイの中では、結婚に関する記述はないが、全体をとおして、前ほど不安定で危うい印象はなくなっている。

■ストーリー

全4章のうち「雨が世界を冷やす夜」「男友達の部屋」「ほしいもののこと」では、日々の生活のなかで、家族、友人を巻き込みながら起こるできごとを、簡潔で、潔ささえ感じる文章で書いている。ときに読者をも共感の渦の中に引き込んでしまう、そんな現実感もにおわせながら。

■感想
テーマが決まると、それに沿ったエッセイというのは、普通になってしまうのだろうか。昔の作者のエッセイに比べると、棘がないというか、落ち着いた印象をもった。それは、もしかしたら作者のプライベートが大きく影響しているのかもしれない。結婚をし、落ち着いてくると、周りに対しての毒も薄まるのだろうか。昔のエッセイがそれほど毒を吐いているとは思わないが、読んだ印象はかなりトゲトゲとしたものだった。それが作者の印象として強く残っているので、本作のどこか暖かさのある雰囲気というのには、少し驚いた。

そうは言っても、男友達をテーマとしたエッセイはやはり強烈だ。作者独特の感覚というか、エッセイから感じるのは、普通の主婦とは違うのだなぁ、ということだ。結婚生活を送っているとはいえ、売れっ子作家としての仕事や、夜中に徘徊するなんてことは、普通の主婦ではない。自分が保守的だからそう思うのかもしれないが、作者の旦那さんはかなり大変そうだなぁ、と思ってしまう。ごく普通の主婦のエッセイなんて誰も読みたいとは思わないので、これでいいのかもしれないが…。

作者の作品を出版順に読んでいくと、作者の変化がエッセイを通じて読みとることができる。「いくつもの週末」で結婚生活を描いていたが、本作はその延長として、幸せな結婚生活を感じることができた。ただ、時々盛大な喧嘩をして夜中に家を飛び出したりするらしい。どことなく他人の日記を盗み見ているような気分になる。作者の日常がかいま見え、どんな考え方をしているかがよくわかる。他の作者と違い、締め切りに対するグチがないのは、作者の特徴だろう。締め切りは辛いはずだが、そんなことを感じさせない自由さがある。

のんびりと楽しげな日常といったところか。




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