いくつもの週末  


 2012.3.24   身につまされる結婚生活エッセイ 【いくつもの週末】

                      評価:3
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■ヒトコト感想

結婚した作者が、結婚生活で感じたことをエッセイとしてつづる。はっきりいえば、身につまされる思いがした。作者はサラリーマンの夫をもつ妻として感じたことを描いているので、自分自身もまたサラリーマンであり、結婚している身なので、考えさせられることがある。本作に登場することのすべてが当てはまるわけではないが、作者が嘆くことについては、男として確かに心当たりがある。ラブラブな夫婦生活をおくる幸せな雰囲気が、あちこちに散りばめられてはいるが、たまに喧嘩の描写が登場すると、それは地獄のように感じてしまう。まるで自分が奥さんになじられているような、そんな気になってくる。世のサラリーマン夫たちは、本作を読むと、何かしら感じることがあるだろう。

■ストーリー

「いつも週末だったら、私たちはまちがいなく木端微塵だ。南の島で木端微塵。ちょっと憧れないこともないけれど」いくつもの週末を一緒にすごし、サラリーマンの彼と結婚した著者。今、夫と過ごす週末は、南の島のバカンスのように甘美で、危険だ。嵐のようなけんか、なぜか襲う途方もない淋しさ…。日々の想い、生活の風景、男と女のリアリズム。

■感想
作者は結婚には向いていないと思ったが、そうでもないらしい。ラブラブな夫婦生活と、かいがいしく夫の世話をする作者。サラリーマン夫が同じ男からしても、かなりだらしない部類に入っているので、よくそこまで献身的に夫婦生活を続けられるなぁ、と驚く場面がある。かと思えば、喧嘩をすると作者が瞬間的に家を出て行こうとしたり、夜中にふらりと本屋に出かけたりと、妻としてどうなのかと思う場面もある。男からすると、めんどくさいと思う場面もある。世の女性がすべて作者のような考えをもっているとは思わないが、それでも女性が共感できる部分は多いのだろう。

ごく普通の夫婦として生活している自分にとっては、作者のグチは身につまされる。ごはんを作るためだけに存在しているのか、なんてことは、もしかしたらうちの奥さんも思っているかもしれない。男女の性質の違いからか、考え方が大きく異なることはある。それはしょうがないことなのだが、作者のグチを読んでいると、申し訳ないという気持ちがヒシヒシとわいてくる。女性が読めば、どこの夫も同じなんだと共感できるだろう。そして、夫たちはなんとなく居心地悪い気分を味わうことだろう。

作家という特殊な職業の作者だけに、サラリーマン夫との生活の違いが描かれている。ここは普通の家庭とは違うかもしれない。1人のほうが断然楽で、1人の方が仕事もはかどるが、それでも一緒にいたくて離婚せずにいる。妻となった女性がどう感じているのか、正直男からするとよくわからない。ただ、なんとなくだが、作者が言葉として代弁しているような気がした。良いことなんてなにもないと結婚生活に悲観したとしても、そこには何かがあるから続けているのだろう。

夫たちは本作を読むことで、密かに反省するかもしれない。




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